#5
ガチャッ
「・・・ん」
扉を開け閉めする音が聞こえ、私は目を覚ました。
だけど周りには誰もいない。時刻は7時だった。
「まだ帰って来ないの?・・・まあ、夕飯の支度しないと」
隆ちゃんが帰ってきていないことを確認すると私はキッチンの前に立った。
でもさっき戸が開くような音がしたんだけどなー・・・。
もしかして・・・
「不審者!?」
なんて叫んでしまった。やば、近所迷惑になっちゃう。
焦っていると2階から誰かが下りて来る音が聞こえた。
・・・ほんとに、不審者?
私はその場にしゃがみ込んだ。
「美咲!?」
・・・この声
私は顔をひょこっと出すと隆ちゃんが立っていた。
「隆ちゃん?帰ってたの?」
って言うと隆ちゃんはこちらに近づいてきて周りをキョロキョロ見渡した。
「不審者どこ」
・・・あっちゃ~。こっちに聞こえてたのか・・・。
「隆ちゃんの聞き間違えだよ。私、夕飯!って叫んだんだよ」
どう聞いたって「不審者」と「夕飯」を聞き間違える奴なんていないだろうけど。
でも彼は「そうか」なんて言って、ソファに座る。
「まじ焦った・・・」なんて頭を抱えて呟いて。
・・・って私、何か忘れてない?そう、忘れてる・・・、彼は、私の・・・
「そうだよ!なんで隆ちゃんが先生なんて・・・しかも担任なんてやってるの!」
いきなり叫んだ私の声に隆ちゃんはびっくりしたが、直ぐに「あ~」という反応。
「驚いた?」
なんて生意気なこというから、私は頭に血が上った。
「驚くに決まってるじゃん!先生と生徒が同居!?ありえない!どうして言ってくれなかったの!?」
「驚かせたかった、以上」
カッチーン
昔の優しーい隆ちゃんはどこへいったんでしょうか。
「あ、それより美咲の携帯番号とメアド教えて。困るから」
・・・こっちも怪しまれるから。
なんて思いながらも連絡方法は携帯しかない。
仕方なく携帯を取り出し赤外線通信をし、私は料理を再開した。
のん気にこんなことしてる場合じゃないのに・・・。
ばれたらどうするの?とか離れて暮らそう、とかないの?
そう思っているうちにいつの間にか外は真っ暗。
お風呂も入り終えて、後は寝るだけ・・・。
「寝れないなら一緒に寝てやろうか?子供の時みたいに」
隆ちゃんのその言葉に顔が真っ赤になる私。
バカみたい。
「もう私は子供じゃないの!おやすみ!」
一軒家に二人きり。
昔の幼馴染み、現在の担任の先生。
東野美咲、これからやっていけるかな?