#2
隆ちゃんが引っ越したのは、確か隆ちゃんが中学1年生の時だったかな?
私は隆ちゃんの足に縋り付いてたっけ?
だって隆ちゃんは私のことを妹のように可愛がってくれて・・・
いつの間にか距離が縮まりすぎて、近すぎて・・・。
「隆ちゃ~ん」
私はお母さんが「隆ちゃん」って呼んでいたから、それを真似してそう呼ぶようになった。
「やだやだ!隆ちゃんが行くならミサも行く!」
この時、私は自分のことを「ミサ」と言ってたかな・・・。
そんな私に隆ちゃんは優しく微笑みかけてくれて・・・。
その笑顔が大好きで、彼の笑顔が眩しいほどに素敵だったから。
「こら、美咲!迷惑かけちゃダメでしょ!」
「はは、美咲?俺、また美咲が大きくなったら戻ってくるからな・・・」
なーんて言ってたかな?
って過去を振り返ってる場合じゃないよね。
あの日の翌日、お母さんはニューヨークへ行ってしまった。
その日から、隆ちゃんへの配達便が増え、家の中のあちこちにダンボールが転がっている。
「・・・」
私はただ立ち尽くしているだけ。
「美咲も手伝って」
・・・一人で出来ませんか?って言いたいけど、お世話になった隆ちゃんには言えない。
「はーい」
私は隆ちゃんの部屋・・・私の部屋の真ん前の部屋にダンボールを運んでいく。
部屋の中で隆ちゃんはダンボールの中身を開け整理をしていく。
そういえば・・・明日学校だ・・・
全然実感が湧かない。
それに・・・隆ちゃんと二人きりで息苦しい。
だって久々に会ったのになんだろう、「久しぶり!」みたいな盛り上がり感がない。
なんだか親戚のおじさんに会ったみたいな?
「美咲、そのダンボール持ってきて」
「はいはい」って心の中で返事。
これから本当に大丈夫なのだろうか?
やっていけるの?異性と二人暮らしだよ?
まあ、異性といってもお兄ちゃんみたいな存在だったんだけどね・・・。
いつの間にか時刻は夜の10時を回っていた。
「私そろそろ寝るね、明日学校だし」
「あー、そうだな」
私は大きな欠伸をして隆ちゃんの部屋を出て行こうとした。
「美咲、ありがと」
その時の彼の顔・・・とても懐かしくて・・・。
あの頃の彼の顔と全く変わってない。
眩しくて・・・素敵な笑顔。