#15
夏休みに入り、私は毎日10時に起きることが日課になった。
その時間に起きても隆ちゃんはいない。
数学以外のテストで赤点を取った人のために追試の面倒をみている。
「暇だな~」
昼の3時くらいになるといつも隆ちゃんが帰ってくる。
なかなか休みが取れないから、どこかへ連れて行ってくれるという約束も途切れつつあって・・・。
ガチャッ
玄関が開いたと供に私は玄関へと小走りで駆けつけた。
「涼しいなー、こん中」
「おかえり」
外は猛暑だけれど、冷房のある部屋にいる私は暑さなんて気にしていない。
「水でも飲む?持って来るね」
私はガラスコップに氷を4、5個入れる。
コポコポっとコップに入っていく水。
「はい」
「サンキュー」
最近になっては、隆ちゃんの言動全てがかっこよく思える。
「あ、そういえば次の日曜日から3日くらい休めることになった」
「え!本当!?じゃあ、どこか行こうよ!」
3日って言ってもすぐ終わっちゃうよね…。
「お泊りでもするか?」
「・・・え?」
まさかとは思ったけど、まさか隆ちゃんの口からそんな言葉が出るとは思わなかった。
だってそんなの・・・カップルがすることじゃないの?
「りゅ、隆ちゃんって・・・か、かかか彼女とかいないの?」
うん、完璧不自然すぎた。
「今はいない、ってか本気でお泊りしたいなら旅館予約するけど?」
「う、うん!え、でもでも・・・それって二人?」
「他に連れて行けるやついる?」
私は頭を横に振った。
嬉しい。でも“今は”って言うのがずっと引っ掛かってるの。
前はいたってことだよね。そりゃあ、そうだよね。
このルックスの持ち主だし、モテなかったわけないもんね。
でも、少し・・・ヤキモチ妬いてる自分がいる。
「じゃあ、美咲に見せたいもんがあるからその近くの旅館予約する。まあ、ここから遠いから知り合いはいねえだろ」
「ありがと、いろいろ考えてくれて。さすが藤倉先生!」
なんてふざけていってみる。
「っていうか、お前隆ちゃん隆ちゃんって呼びすぎ。先生って呼ぶ練習しろよ」
「えー・・・まあ、いいよ!わかった!今から実行します!」
ふざけて、お互い目を合わせて笑って・・・。
幸せ・・・─




