#10
「何言ってるの?先生。頭壊れちゃった?」
“美咲は・・・俺の女だから”
それとも私の聞き間違い?でもね、さっきからエコーされて・・・。
「先生認めるんだー。学校にばれてもいいわけ?」
「ちょっと待った!私は先生の女でもないし、貴方の女でもない!」
意味分からない。何これ?
「美咲から離れろ」
隆ちゃん怖い・・・。声が低くていつもとは違う、本気モード。
隆ちゃんが私から西を離す。
「せんせー、正当防衛は止めてください」
隆ちゃんは西を睨みながら、私を抱き寄せるかのように手を肩にまわした。
「美咲、帰るぞ」
「う、うん・・・」
西の家を出てからは無言で家に帰った。
外はすっかり真っ暗。時刻、午後7時。
ガチャッ
「わ、私、夕食の用意するね。お腹減ったでしょ?」
私がキッチンに向かおうとしたときだった。隆ちゃんに腕を掴まれてしまった。
「これ・・・」
「あ・・・」
隆ちゃんの見る先は私の首筋だった。
西につけられてしまった紅い跡。
「隆ちゃんが気にするようなことじゃないから・・・」
スッと掴む手の力が弱くなって、私は小走りでキッチンに立った。
心臓が私を壊そうとする。すごい、うるさい。
「ねえ、隆ちゃん・・・さっきの・・・どういう意味?」
なんてポロッと口に出てしまう。
「そのまんまの意味」
真剣な眼差しで言うから・・・勘違いしちゃうよ?
「そこは俺の生徒だから、とかじゃないの?女って言ったら勘違いされちゃうよ?」
なんでだろう、期待してる自分がいるのに・・・逆のことを言っちゃう。
悪い方向へと持っていこうとしてる。正確に、本当なのか確かめたい自分がいる。
「美咲、冗談もほどほどにしろよ?」
「・・・は?いや、冗談じゃないって」
「それより、ご飯まだ?」
・・・流された!あっさり?まだ問い詰められるけど・・・これ以上は私が持たない・・・。
だって、この空間にいることだけでも息苦しい。
ねえ、隆ちゃん?
隆ちゃんは俺の“妹”みたいな感じで思ってくれてるのかな?
それとも・・・。期待なんてしてないっていったら嘘になる。
でもね?もし違ったら、もし隆ちゃんが妹だと思ってるなら・・・。
私・・・辛いよ?




