#1
ある日、突然のことだった。
─ピーンポーン─
玄関のチャイムが鳴り、私はお母さん(由美子)の変わりに玄関へ向かった。
ガチャッ
「・・・誰?」
目の前には見知らぬ男性。でもどこか面影が合って・・・。
「みさきー、誰だったの?」
「知らな「藤倉隆矢です!」
何この人!・・・って藤倉隆矢・・・!?
ちょ、え?何事?
「隆ちゃん!?入って入って」
奥からお母さんの声が聞こえる。
すると彼は靴を脱ぎ家へと上がり込んだ。
私はただただアタフタしていて・・・。
リビングに行くとお母さんが彼をマジマジ見つめていた。
「隆ちゃん、大きくなったわね~」
「いえいえ、美咲も大きくなりましたよ」
突然、彼に名前を呼ばれ少し反応してしまう。
「それより、あの件のことなんだけど・・・」
いきなりお母さんは真剣な顔になる。
「はい、いい条件なので」
そう彼が言うとお母さんは満面の笑みになった。
でもその笑みは直ぐに真剣な顔になり、お母さんはこちらに向き直った。
「美咲、お母さんね・・・お父さんのところに、ニューヨークに行くことにしたの」
・・・は?空耳ですか?
でもお母さんの顔を見て、冗談だとは思えない。
「だから美咲を一人置いていくのはさすがに・・・だから隆ちゃんに来てもらったの」
ちょっと待ってよ・・・は?
理解しようと努力しても、全然ついていかない。
「ちょっと・・・それって・・・は?おか、は?」
言葉がうまくまとまらない。
「美咲はまだ学校行かないといけないし、英語無理だと思って留学はさせないことにしたの」
・・・まあ、納得。って言ってる場合じゃないよ!
「認めてやれよ、な?」
・・・は?何この人。他人のくせに出しゃばって来た!
でも私ももう高校生だし、大人の仲間入りの途中だし・・・。
「まあ、えー・・・うん」
「え!?いいの?やったー!」
・・・え?さっきの“うん”って、そういうふうの意味?
まあ、いっか・・・。
私の目の前ではしゃぐお母さん。とても嬉しそう。
まあ、昔からお母さんとお父さんはラブラブだったし、仕方ないよね?
でも彼と・・・隆ちゃんと一緒に暮らすことになるなんて・・・。
彼は・・・隆ちゃんは、私の小さい頃の幼馴染みだったから・・・─