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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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トシの家には電話がない、だからこういう時はどうにもならない。


車内でタバコを一本灰にしてから、クルマを出した。





「玉井給油所」


トシが高校時代からバイトして卒業とともに正社員として就職した共同石油のガソリンスタンド。


ウチの修理工場も使っていて、俺も使っているスタンドだ。


クルマを入れると社長の玉井が奥から出て来た。


「やあ、いらっしゃい、帰り遅いねえ。」


「・・・今日、園部は?」


「今朝電話あって、今日は休ませてもらいてえって言っててな。・・・あ、もしかしたら明日もって言ってたわ。」


「・・・そうすか、・・・どうでした?声の様子とか。」


「いやー、俺も忙しかったからなー。・・・うん、そういやヤケにゆっくり喋ってたなー。」


・・・前歯が折れてたから喋りづらかったんだろう。


「俺よかショウの方が知ってんだろ?・・・トシになんかあったんか?」


「いや、別に・・・ここんとこ顔見てなかったから。」


給油を済ますと現金で支払い、スタンドを出た。





変わらず降り続ける雨の中を、美弥の働くファミレスまで飛ばした。


駐車場にクルマを入れ、しばらくの間ガラス越しに店内を眺めていた。


客はまばらで男女のカップルが数組、会社帰りのサラリーマンが数人、家族連れがひと組。


無論ここから見えない席もあるから客全体は見えないが、行き交う店員に美弥の姿はない。


クルマを降り足早に店に入り、喫煙席に誘導してもらった。


美弥と同じぐらいの歳格好の店員に、メニューを見ずに「瓶ビールお願い。」と注文した。


店内を見渡してタバコに火を点けようとしたら、ビールが到着した。


「ありがとう・・・あ、俺、山浦というんですけど、園部さんは今日お休みですか?」


不審に思われないために、なるべく丁寧に聞いてみた。


「園部さんは今日はお休みです。」


「ああ、そうですか。ありがとう。」


「園部さんのお兄さんから電話があって、そう言ってました。」


・・・なんで本人じゃなく、トシが電話するんだろう?


そのトシも仕事を休んでるし、明日も休む可能性がある・・・。


キリンビールを小さめのコップに注いで飲む、味わう気分にはなれない。


立て続けに注いでは飲み、5分で飲み終える。





・・・チンピラ崩れをブチのめし、トシのアパートで空振りして、またここで空振り。


俺の胸のわだかまりは、嫌な胸騒ぎに変わる。


透明な筒に入った丸まったレシートをつかみ金を払って店を出た。



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