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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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プレジデントは急減速したかと思えば急加速して、路肩のガードレールに左フェンダーを擦りつけた。


慌ててハンドルを戻し、今度はセンターラインを超えてからやっと車線に戻る。運転手が動揺してパニックに陥っているのが判った。


俺は射程距離に入ったプレジデントの右タイヤに、もう一度狙いをつける。






・・・突然、俺の後ろに光芒とエンジンの唸りが迫ってきた。どこかの脇道から顕れたクルマがハイビームのまま不気味に追い上げてくる。


俺のアタマのすぐ左をなにかが駆け抜けて行ったかと思うと同時に、乾いた銃声が鳴る。今度は続けざまに銃声が乱れ飛び、プレジデントのトランクに孔を開け左のテールレンズを割った。


クラブマンの右ウィンカーが弾け飛ぶ、次の銃弾は左バックミラーを砕いて吹っ飛ばした。プレジデントのメッキバンパーには遠慮なしの銃弾が叩きこまれている。


「・・・こいつらは俺と石山双方を消しにきている。」確信すると肌が粟立ってきた。手のひらが脂汗にまみれる。


じわじわと迫り来るクルマの車種は判らないが太い排気音と小刻みに揺れるヘッドライトから、マフラーや足回りを改造しているスポーツタイプだと感じる。・・・旧型セリカとかサバンナ、そんな感じがする。


運転席と助手席の両方から発射されているような銃声が重なる。俺は苦し紛れにジグザグを描きながら突っ走る。






・・・半年ほど前、どこかの飲み屋で飲んでいる時の隣の客の会話が不意に過った。


「関西のヤクザがこっちに進出してえらしくて、誠龍会と掛け合ったけど物別れになったって誠龍のチンピラのセイジが言ってたわ。まぁ俺には関係ねえけどな・・・。」


・・・誠龍会と対立する組織が雇った殺し屋。そう考えればヤツらの飼い主を消すにはいい機会だ。






衝撃が来た、俺の背中の左側が灼けるように熱くなる。内臓に銃弾がのめり込んだのがはっきり判った。熱い血液が噴き出し、腰の方に流れる感覚までも。


途端に俺の全身は激しい怒りの塊と化した。


「このクソ野郎どもは絶対許さねえ!刺し違えても殺してやる!」


アクセルは高回転のロックのまま俺は眩しい光に向き直り、やぶれかぶれの銃爪を引く。


1発目は右ヘッドライトをぶっ潰した。2発目は運転席あたりに吸い込まれる。3発目を引くと同時にヤツらのクルマはタイヤを鳴らして右に急旋回していく。


横転するような勢いで右に曲がり工場の擁壁に激しく衝突した。2発目の銃弾が運転してるヤツの脳天にでも命中したようだ。






全身に灼熱の苦痛が疼きだす。呼吸するたびにアタマが朦朧となり、込み上げてくるものを吐き出すとそれは熱い血反吐だ。


俺は弾の尽きたパイソンを放り投げようとしたが、ホルスターにしまう。


「これは玉井社長の化身だもんな・・・、捨てたらバチ当たるよな。」






プレジデントは蜂の巣になりながらも走り続けている。




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