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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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俺は姿勢を低くしてクラブマンのアクセルを全開にする。もちろん無灯火のままだ。


このバイクはアクセルグリップをメーター側に強く押し込むと、エンジンを高回転でロック出来るように改造してある。克也がしてくれたものだ。


だが4400CCのプレジデントと、たかが250CCの単車ではいくら吹かしても平行線のままだ。


俺はイライラしたままプレジデントのテールを見据えながら突っ走る。リアガラスは真っ黒なフィルムを貼ってあるから中はまるで見えないが、リアシートで震えて喚いてる石山一彦の姿は想像できた。


・・・プレジデントのブレーキランプが点灯した、赤信号を無視して突っ切ろうとしたが交差するクルマに阻まれて減速したようだ。


数台をやり過ごしクルマの往来の狭間を狙ってプレジデントは発車する、急ブレーキの音と派手なクラクションの音を響かせて。


この停滞でだいぶ距離が詰められた。俺は青信号に変わった交差点を100Kmオーバーで駆け抜ける。早朝まで黄色点滅の信号が次々に後ろに過ぎて行った。






プレジデントの後方20mまで追いついた時、俺はアクセルをロックしたまま左肩に吊ったホルスターからパイソンを引き抜く。


運転手はその気配を察知したのかジグザグを描きだす、石山が俺の動きを見ていてそうさせたのかも知れない。


俺はリアガラスを狙ってダブルアクションで銃爪を引く。・・・銃弾はルーフの隅に当たって火花を散らせた。小刻みに揺れるバイクに乗ったままだと正確な狙いはつけられなかった。


今度は右後ろのタイヤを狙うがアスファルトに当たり、いくらか砕けただけだった。


・・・残弾は4発、装填など不可能なこの状態ではこれ以上無駄弾を飛ばすわけにはいかない。俺は撃鉄を起こしてシングルアクションで撃つことにする。






市街地からはだいぶ離れた。舗装状態が悪くなる一方でプレジデントも俺も減速するが、追うものと追われるものの緊張はそのまま続いている。


路面はツギハギだらけ、横断水路やマンホールが頻繁に顕れるからそれを避けてなんとかついていくのがやっとになる。





しばらく走ると、最近道路改良されたらしい平坦で黒々した舗装部分が顕れる。俺はあらためて構えなおしたがプレジデントも勢いづいてスピードを上げた。


・・・俺は苦し紛れの1発をぶっ放す。銃弾は思いどおりの軌道を描き、一瞬にしてリアガラスを蜘蛛の巣状に変えた。


石山一彦の悲鳴が聞こえてきそうだ。




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