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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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眼下の石山一彦事務所ビルは全階とも明かりはなく、どの窓もブラインドが下がっていた。


真奈美もそばに来てビルを見下ろす。


「・・・すべてはあの石山が原因だよ。ちきしょう。・・・実はね、美弥から話を聞いた時、あたしが復讐しようと思っていろいろ考えてたんだよ。」


真奈美はビルを睨みながらつぶやいた。


「そしたら石山と関係のある誠龍会のヤツらが次々殺されていって。・・・そん時、やったのはショウちゃんだろうってすぐ判った。」






「・・・トシが殺られるほんの少し前に、俺んとこに来たんだ。ポンコツのツラでね。・・・その夜、ヤツは布団の中で啜り泣いてた。」


俺はハイライトに火を点ける。


「・・・俺にとってそれがトシの最後の声になった。・・・俺はヤツの異変に気付きながらなにもしなかった。」







真奈美は一度こっちを向いて、ため息をひとつ吐く。


そして「屋上には誰も上がって来ないようにするね。」と言い、ドアの方へ歩いていった。


ノブに手を掛けた時にもう一度振り向く。


「・・・それからね、・・・美弥はショウちゃんのことをずっと愛しているんだよ。昔も今もこれからもね。」


表面に錆が出た鉄の扉がバタンと閉まった。







・・・物干し場の丸椅子を持ってきて、ビルの玄関が見通せる最短距離に陣取る。


コンクリート擁壁の上の手すり足の高さが15cm。丸椅子に座って、そのすき間からビルを眺めるとちょうどいいポジションだった。


肩に背負ったウィンチェスターM70を下ろし、ポケットから弾丸をつまみ出した。


手元は暗かったが、闇に目が慣れているのと少し離れたところにあるチャチな常夜灯のお陰でなんとか見てとれた。


コッキングレバーを上げ手前に引き、顕れた細長い孔に弾丸を詰める。5発装填してレバーを戻す。


銃爪の上のセフティーを掛けて膝の上に横たえた。


凶弾を腹に詰め込まれたM70は、命を吹き込まれたように重い。全身真っ黒の凶器は無言で笑っているように思えた。



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