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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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・・・左胸にバッジを光らせていた副会長と呼ばれていた野郎・・・。


ヤツの指揮で俺は捉えられ、かなりひどいリンチを受けた。それだけならまだいい。


ヤツは、玉井が乗り込んできた時に、自分だけ裏口から逃げて行った。


玉井の鬼気迫る様子に怯え尻尾を巻いて逃げ、仲間を見殺しにした。


表にはまだ少年と呼べるぐらいの自分の部下を残し、自分の保身のみを考えての行動だ。






「・・・なにがヤクザ組織の副会長だ、最低の腰抜け野郎が。」俺は改めて腹わたが煮え繰り返ってきた。


・・・一番目のドアを開ける。中はブラインドが下げられている小会議室のようだった。


冷えた空気が漂うだけで、人気はない。


・・・二番目のドアに手を掛けノブを回した瞬間、ドアの板が弾けて粉々に飛び散る。


俺は壁際に身を寄せた。半開きのドアは部屋の中から掃射されてくる銃弾で滅茶苦茶になる。


向かいのパーテーションの樹脂壁は孔だらけだ。


サブマシンガンらしい銃声とともに、気が狂ったような喚き声が聞こえる。間違いなくあの腰抜け野郎の声だ。


・・・ヤツは殺戮者の到来の恐怖で、まともではなくなってるようだ。


しばらくすると銃声が止む。ガク引きしてめくらめっぽうに放った弾が尽きたのだ。


・・・俺は真っ白に煙る部屋に乗り込む。副会長は飛び出しそうな目玉で俺を眺め、口を開けて荒い息をついていた。


「・・・な、なあ、もうすぐ俺は会長になる。・・・今も自由になる銭はいくらでもある!・・・なあ、どうだ。・・・銭はいくらでもやるぜ。」


俺はパイソンを水平に構え、撃鉄を起こす。ゆっくりと重く、そして確実に「カチャリ」と弾倉が回る。


「・・・そ、そうだ、お前の度胸は大したもんだ!・・・ウチに入ったらすぐに幹部になれるぜ!俺が保障する!」


俺は腹から息を吐き出す。「言いてえことはそれだけか?」


・・・副会長は後ずさりして机の引き出しに手を突っ込んだ。俺は躊躇なく銃爪を引いた。


銃弾はヤツの心臓に吸い込まれ、身体は壁まで吹っ飛んだ。一発で即死だったが、俺の手は止まらない。


続く銃弾はアタマを吹っ飛ばし、右肩を飛ばし、左足へとぶち込む。弾倉が空になると装填し、ダブルアクションで撃ちこみ続ける。


・・・気が済んだ時には、ヤツは人間としての形は残っていなかった。






・・・遠くから何台ものサイレンが聞こえてくる。


俺はパイソンを構えたまま階段を駆け下りた。だが誰も顕れはしない。


もうこの建物には戦闘能力の残っているヤツはいないようだ、身体は無事でも立ち向かう気力などないのだろう。


飛び降りるように一階まで来て、裏口を探す。湯沸し室のようなところに裏口のドアがあった。


ドアを蹴飛ばして外に飛び出した。



・・・狭い裏通りに黒いバイクがうずくまってる。約束通りに克也が用意してくれたのだ。


HONDA GB-250 クラブマンと呼ばれる単気筒の馬。パワーはあまりないが、軽いボディーと取り回しやすさで複雑に入り組んだ路地を飛ばすには申し分ない。


エンジンを掛けて飛び出す。とりあえず南の方向へ走る、サイレンはますます近づいてくる。


・・・いきなり途中の路地から3台のバイクが飛び出し、ホーンを鳴らした。


ヤツらのバイクは同じクラブマンでナンバーを折り曲げている。よく見ると、3台とも俺と同じ服装で肩にライフルを背負っていた。


俺と併走してきたのはサングラスを掛けた克也だった。そして左手で「連絡は美弥へ」と合図を送ってきた。


・・・3台はそれぞれ別の方向へ走っていく。俺を逃がす囮になるつもりなのだ。







「馬鹿野郎ども、下手したら死ぬかもしれねえのに・・・。」


俺は胸が詰まって息苦しくなる。


「馬鹿野郎ども!」声は風にかき消された。



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