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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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正面に見える階段から血相を変えたヤクザどもが、拳銃を片手に駆け下りてきた。


怒りと緊張に顔を引きつらせている。罵声を上げながら日本刀を抜き出してるヤツもいた。





俺はフロントガラス越しに見えるヤクザたちに狙いをつける。両手でパイソンを握り、ダブルアクションで銃爪を引いた。


重い銃爪がガツンと入ると、もの凄い衝撃と爆音とともにパイソンが跳ね上がる。それはまるで、握っている俺から逃げ出そうと抵抗している生き物のようだ。


フロントガラスの右側に孔が開き、一瞬で前が真っ白になった。ジグソーパズルの模様のようにガラスにヒビが入ったからだ。


今度は撃鉄を起こし、シングルで左寄りにぶっ放す。


すばやく後部座席のM70を掴みそのストックの尻でガラスを突き破り、バレルでヒビだらけのガラスを薙ぐ。


バラバラとガラスの破片が崩れ落ちると、目にしみる硝煙が車外へ抜けていった。


俺が撃った弾は最前列にいた黒シャツの男の右肩に命中したらしく、そいつは拳銃を放り出し、叫び声を上げてのたうち回っていた。


・・・フロントの枠越しにもう一発ぶっ放す。少し上にいた白シャツの男の喉元に命中して、後ろに吹っ飛んだ。


声帯をやられた悲鳴とともに、血を噴水のように上げて倒れた。多分、即死だろう。


ドアを開けながらM70を右肩に掛けヤツらから目を離さずに、クルマから滑りだす。ヤクザどもは一瞬にして血ダルマと化した仲間を見て、激しく動揺している。


俺はタタキの上まで乗り込む。・・・次の瞬間、ヤツらの反撃の銃弾が跳んできた。


俺は姿勢を少し低くしただけだったが、銃弾はあらぬ方向に跳んでコンクリートの床や壁に当たり「キューン」と音をたてる。ブラインドを下ろした窓にも当たって、派手に割れた。


・・・ヤツらの中で実際に撃ったことのあるヤツは少ないのかも知れない、そんなことを思った。少々心得てるヤツにしても、恐怖が先立って狙いが定まらないのだろうとも。


普段、徒党を組んで強がってる小動物の群れらしいとも思う。






そんな俺も、今が初めてなのだ。だが俺は何の恐怖も感じない。


銃弾に倒れるならそれまでの運命。弾が逸れたら前に進むだけのことだ。


・・・ウジ虫どもに対する怒りは変わらないが、この瞬間のすべてを冷静に見極めている俺がいた。「覚悟が違う」やっぱり、そう感じた。


俺は低い姿勢のまま、確実に狙いを定めてぶっ放す。ひとりのアタマが半分吹っ飛んだ、もうひとりは左胸に受け即死。


もうひとりは日本刀を握った右腕の中間に当たり、肘から先が落っこちた。


・・・ヤツらは完全に逃げ腰になり、我先に2階へと駆け出す。


俺は弾倉の薬莢を弾き落とし、階段を登りながら装填する。






パイソンから、玉井の笑い声が聞こえた気がした。



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