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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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・・・灯りに辿り着く、国道に合流した。見覚えのある交差点、となりの市だった。


このまま北へ走れば一時間で街だ。


俺はほぼ片目状態なので、遠近感がつかめず制限速度で走るのがやっとだった。


脳が激しく震動したせいか、身体が揺れてる感じはまだ続いている。窓は全開だが、脂汗もひいていかない。


・・・上越方面へ向かう箱トラックたちが対向車の途切れた隙を狙って、次々と追い越していく。






「・・・ショウ、大丈夫か。」荒い呼吸の合間に玉井がつぶやいた。


「・・・向こう側から戻されましたよ、社長に。」歯が欠けた口でなにか言うのは、楽じゃなかった。


玉井が力のない声で笑った、続いて苦しそうに咳き込んだ。






限界を感じるほど消耗している、だが走るしかない。


目に映るものが脳に反映されていない、それが眠気のせいなのか極度の疲労のせいなのか。


・・・街のはずれまでやってきた。やっとここまで辿り着いた・・・。


途中ボンヤリしていて記憶も途切れたが、来ることができた。


「・・・社長、街に入りましたよ。」首を捻って玉井に目を向ける。


玉井は目を閉じている、荒い呼吸が聞こえない。胸がカッと熱くなり息苦しくなる。


「・・・俺の心配してる場合じゃなかったのによ!」


まばたきとともに涙がこぼれてきた。開かない目からも涙があふれる。


震える両手でハンドルを握り、街へと突っ走る。・・・もう俺は玉井の方を振り向きはしない。






神社の巨木の下にクルマを停めた。警察に張られてる危険は承知の上だが、躊躇するなら踏み出す方に賭ける。


エンジンを切る。・・・静寂をこんなに淋しく感じた夜は、今までなかった。



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