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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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52


・・・悪鬼と化した玉井の形相の凄まじさに圧倒され、身動き出来ずにいたリボルバーの色男が慌てて拳銃を構える。


さっきまで自分のオンナのように愛撫していたリボルバーを、ぎこちなく玉井の方へ向けた。右手が小刻みに震え、狙いが定まらない。


その瞬間、まったく躊躇のない玉井の右手のリボルバーが火を吹いた。銃身が跳ね上がる。


色男の拳銃が火花を散らして「キーン」と金属音をあげて、クルクルと宙を舞う。


スレートの壁の倉庫が爆音で揺らぐ、玉井のリボルバーを震源に衝撃波が倉庫の隅々まで走る。


色男は鳥のようにカン高い悲鳴を上げ、左手で右手首を押さえる。落下したヤツのリボルバーは、弾倉のあたりがグシャグシャに潰れていた。


色男の右手首が吹っ飛ばされて真っ赤な傷口から血が噴き出し、発狂したのかコマのように転げ回る。


叫び声が、いつか動物園で聞いたオウムの声のようだと思った。


玉井は構え直すと遠慮なく2発目をぶっ放す。轟音が再び倉庫を震わす。


天井の筋交いのブレスが、ビリビリと音を立てた。


色男の頭部に命中した弾丸はヤツのアタマの左半分を吹っ飛ばし、砕けた頭蓋骨や脳漿が波状の壁に飛び散る。


そのまま床にノックダウンした色男は、辺りに肉片を散らかす無残な物体に変わり果てた。





・・・脂汗を滴らせた巨漢が、恐怖に駆られながらも1mぐらいの鉄パイプを振りかざして玉井に襲いかかる。まさに玉砕、破れかぶれの心境だろう。


玉井は鬼の形相のまま、銃爪を絞る。


・・・巨漢の眉間にぽつっと孔が開く、次の瞬間ヤツの後頭部が吹っ飛ぶ。薄煙とともに、短い頭髪の頭蓋骨が粉々になる。


植木鉢を叩き割った感じに見えた。スイカの中身のような真っ赤なものが四方に飛び散る。


弾丸が抜けた後頭部は、すり鉢状になり潰したザクロのようだった。間違いなく即死だ。






・・・キツネ目は完全に腰を抜かし、トカゲのように四つん這いになってガクガク震えていた。言葉にならない喚き声をあげ這いずる。


玉井はそんな小動物にも容赦はなかった。


左手のオートマチックを右手に持ち替える、その銃は俺がクシカワから奪ったトカレフのようだった。


キツネ目の尻に銃弾が打ち込まれる。スライドが前後し、空薬莢が弾け飛んだ。リボルバーと比べると音は小さいが、凶弾は確実にキツネ目を死に追いやる。


苦痛の叫びをあげているが、玉井は淡々とぶち込む。後頭部に狙いをつけた一弾で、キツネは絶命した。





目に滲みる硝煙で辺りは白く煙る、生温かい血の匂いが立ち込めた倉庫の中で心臓が動いているのは死にぞこないの俺と、もはや人間とは言えない狂気の野獣が一匹。


異常な静寂に包まれた倉庫の中は、まさに地獄絵図と云えるだろう。



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