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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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・・フジタの鼻梁は大きく腫れあがり半開きの口に鼻血が垂れて、呼吸するたびに顎へと流れ出している。


鼻梁を叩き潰され全ての指をへし折られても、憎悪に燃える三白眼は俺を睨みつけていた。


・・・俺が油断して諒子に視線を移した瞬間、寝たままのフジタの足が飛んできて、俺は足払いを食らって派手に倒れる。


上体を起こしたフジタが立ち上がろうとする。俺はすばやく立ち上がる途中でヤツのこめかみに回し蹴りを入れると、横に吹っ飛んだ。毛の長い絨毯の上だったので、大きな音はしなかった。





胸元が真っ赤に染まったゴルフシャツの襟を引っ掴んで身体を起こし、結束バンドで後ろ手に縛る。首の後ろの襟を掴んで立たせる。


俺は圧し殺した声で「・・・歩け。」と言い、フジタを前に突き出す。そのまま玄関まで行き、鍵束を掴んで外へ出る。


廊下には誰もいなかった。眼下の街の灯りが瞬いてるだけだ。


靴下のままのフジタの首根っこを掴んで一緒に歩く。昇ってきたエレベーターも無人だった。


少し抵抗するフジタの身体を突き飛ばして乗り込み、そのまま1階まで降りていく、ヤツの荒い呼吸の音だけが聞こえる。






・・・俺は目撃者だとか指紋だとか、まったくどうでも良くなっていた。


トシの屍に復讐を誓った時すでに、自分の行く末のことなんか考えちゃいない。俺は俺の決めたことをやるだけだ。


邪魔するヤツは誰であろうと、尻ポケットのトカレフかナイフで黙ってもらうしかない。無関係の者には申し訳ないが、これも俺が決めたことだ。






地下駐車場の「1011」とペイントされたところには、赤いBMW525iが停まっていた。諒子のクルマだろう。


隣も「1011」とペイントされていて、そこにはシルバーのベンツ300SEが停まっていた。


・・・俺は鍵束をポケットから出し、ジャラジャラとクルマの鍵を探す。ベンツマークの鍵をドアに挿しロックを解除する。


右の助手席のドアを開けフジタを押し込み、俺は運転席に乗り込む。フジタの本革のベルトを抜き取り、首とヘッドレストを一緒に括った。


直6・3000cc、W126という型式のSEはロングのSELより16.5cm短いし、先代の116より5cm狭くなったとは言え、幅員1.82mのボディーは日本ではやっぱりデカい。


スターターを回してエンジンを掛けるが、静か過ぎて掛かってるのかも判らないほどだ。


日本の高級車にもない「エアバック」という安全装置の付いた不恰好なハンドルを回し、夜の街へクルマを出した。




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