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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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俺とフジタは睨み合う。沈黙のまま動かないのに、背中には汗が伝ってくるのが判る。


張り詰めた「気」をぶつけ合うことで、かなりのエネルギーを消費してる気がする。


沈黙・不動の「気の糸」を切ったのはフジタだった。


一旦身を沈め、腰に捻りを加えその反動で右の拳を突き出してきた。拳は思いのほか速くて、のけ反ってかわした俺の鼻先をスレスレに通過した。


俺が体勢を立て直した時には、左のアッパーが飛んできた。ブロックした右腕に受ける、ズキリと骨まで痺れた。


どうやらフジタは拳闘の経験があるらしい。ヤツはフットワークを使って、徐々に前に出てくる。


俺はもう一度顔面にくるであろうパンチを警戒してると、いきなり左のフックが俺の胃袋にめり込む。一瞬呼吸が出来ず、身体を折りそうになる。


そこへフジタの強烈な右フックが飛んできた。俺は吹っ飛ばされ廊下の壁にぶつかり玄関先まで転がり倒れた。


口の中が切れ、左の前歯が折れた。なにかの角にぶつけ、右目の上が切れて血が流れる。


血と一緒に歯を吹き出す。アタマが朦朧としたが、首をもたげノロノロと立ち上がる。


フジタはファイティングポーズの姿勢のまま、唇を歪めた。


「小僧、その程度か。・・・てめえもあのバカみてえに殴り殺してやるよ!」薄ら笑いを浮かべ、シャドーをしている。






・・・俺はトシの屍を思い出していた。無数に刺された刃物の傷、全身の殴打痕。


そして想像した、トシがこのウジ虫どもの嘲笑の渦の中、面白半分に惨殺された光景を。


そしてもうひとつ。


この卑劣なクズどもに無理矢理拉致されて力まかせに弄ばれ、夜の路上に放り出された美弥の姿。






・・・俺はワザとフラついてみせた。鼻血と血の涎を垂らし、焦点の定まらない虚ろな目をして、よたよたとフジタに近づく。


完全に余裕を持ったフジタは、「死ぬまで殴りつけてやるぜ!」と笑う。止まった的を狙うように、大きく反動をつけたフジタの右が飛んでくる。


俺はその瞬間を待っていた。


ダラリと提げた右手を握り、俺をナメきったフジタの拳をかわしてヤツの顔のど真ん中に叩きつける。


フジタの無防備な突進の動きも手伝って、俺の右の拳はヤツの鼻梁に高速で衝突する。


「グシャリ」と手応えを感じた直後フジタの顔面は歪み、首の付け根から大きくのけ反る。俺はそのまま右拳を振りぬく。


フジタの身体はのけ反った姿勢のまま、後頭部を床に叩き付けた。・・・まるでスローモーションのように、一連の動きが綺麗に決まった。


潰れた鼻梁から大量の血を噴出しながら、フジタは呻いていた。脳震盪を起こして意識は朦朧としているようだ。



俺はフジタの胸ぐらを掴み、リビングまで引きずっていく。


諒子はソファーに座り直し、目だけを大きく開けている。血走った目は、俺とフジタを交互に見ている。






・・・俺は諒子の見てる前で、フジタの両手の指を全てへし折る。


フジタは最初は叫び声を上げていたが、3本目からは腑抜け同然になっていた。・・・諒子は白目を剥いてソファーにぶっ倒れた。



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