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女の名は高柳諒子。
市街地中心部にある高級クラブ「サテン・ドール」の経営者ママで、フジタカズマサの愛人。クラブにはフジタも出資していて、共同経営らしい。
・・・今は骨になり、墓の下にいるであろうクシカワから訊き出した情報だ。
俺はトカレフをテーブルに置くと、諒子に言った。
「・・・これから訊くことに答えてもらいたい。」
諒子は憎悪に燃える眼で睨み、そっぽを向いた。極道者の女は一筋縄じゃいかないよとばかりに、強がっているのが判る。
「今夜、フジタがここに来るのかどうかだ。」諒子は不貞腐れたように、そっぽを向いたままため息をつく。
俺は小箱から結束バンドを2本出した。・・・幅1cmほどの黒いバンドはプラスチック製で、輪にするとギザギザのラックが端末のツメに引っ掛かり、締め方向にはどこまでも締まっていく。手錠と同じような構造だ。
解除するには端末のツメを細いマイナスドライバーで起こすか、ニッパのようなもので切断するかだ。
結束バンドで諒子の足首を縛る。尻のポケットからナイフを出して、刃を起こす。
パジャマのホックの糸を上から切断していく。
パジャマの下は何も着けてなかったため、白い肌と豊満な乳房が露わになる。
俺はその乳首にナイフを当てる。
「乳首を根元から切断する、それでも答えなかったらあんたの中に挿し込んで掻き切る。それでもだめなら喉をぶった切って殺すしかない。」
諒子の身体の震えで、乳首の皮がナイフで薄く切れてプツプツと血の玉になる。
「・・・今日は店が休みだから、夜8時には来ると思うわ。」
俺はナイフを引っ込め、テーブルの上のティッシュで血を拭きポケットに仕舞う。
「・・・それからもう一つ、フジタは合鍵を持っているのか?」
諒子は緊張から解放されてガックリとうなだれて、それが頷きとも見て取れた。
「悪いが、口は塞がせてもらう。」と言い、諒子の口をガムテープで塞いだ。・・・諒子は腑抜け同然になり、なすがままにされていた。
本革のソファーに寝転ばし、俺はデカい窓から街を見下ろす。・・・今朝の美弥とのやり取りをボンヤリと考えていた。
「何年かかろうと戻るまで待つから。生きてる俺と一緒にいたい。」啜り泣く声とともに、何度もアタマを過ってくる。
いつの間にか眼下の街は灯りを点け始めていて、西に沈む太陽は北アルプスの稜線を映しだしていた。
赤紫に暮れゆく空を眺め、「明日も晴れるだろう」とボンヤリ思った。