表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けの疾走  作者: 村松康弘
37/78

37


駅前のスクランブル交差点の信号に引っ掛かった。


寺院を模した駅舎の前には、観光客が気まぐれに撒くエサのせいで住み着いたドバトが群れを成している。


のどかな童謡のメロディとともに横断歩道に吐き出された人々は、暑さにウンザリした表情で向かいのビルの温度計を見上げながら過ぎていく。32℃を示していた。


大通りを走るとつい最近までまともな会社員として、一日も欠勤することなく過ごしてたことを考えずにはいられなかった。





目的地はこのまま北へ。





・・・だが思い直して途中の交差点を右折し狭い路地を抜けて、「沢田モータース」の裏口まで来た。日曜日だから誰も出勤していないことを考えての上だ。


警察の張り込みの危険もアタマを過ったが、どうやらそれはなさそうだった。


・・・事務所の鍵の隠し場所は以前と変わらず、玄関横の植木鉢の下。一応の用心で薄手の手袋はつけたまま事務所へ入る。


フロントの松木が好んで吸うインドネシアの変わったタバコの匂いがして、妙に懐かしくなった。


ホワイトボードの俺の欄は「有給休暇」となっている。


事務所の奥の部品庫に入り、配線の結束バンドとガムテープを拝借して事務所を出た。


ガラス越しに工場内を眺め、洗車場の向こうの整備待ち車輌を見ると忙しいのが判る。


再びクルマに乗り、北へ向かった。





「ダイアモンドパレス」に着いたのが14時過ぎだった。


通り過ぎてすぐの、潰れたビデオレンタルショップの駐車場にクルマを停め、買ってきた作業着を着てキャップ・伊達メガネを着ける。


ガムテープを30cmぐらい切り、段ボール箱に結束バンドとガムテープを入れて封をした。


クルマを降り、ダイアモンドパレスの敷地まで歩く。


10階建ての分譲マンションの玄関前の植え込みには、ツツジに混じって向日葵が咲いていた。


エレベーターに乗り込むと、キャップを少し深くかぶり直した。


最上階の10階で降りて「1011」を目指す。


廊下からの街の眺めは最高だ、夜だったら市街地の中心部の灯りが星の瞬きのように見えるだろう。





・・・「1011」のインターホンを押す。上部には目玉のようなカメラレンズが、俺を見ている。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ