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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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この街から西へ延びる国道は2ケタ国道の割りに幅員が狭く曲がりくねり、古い構造物のため、随所に大型車同士がすれ違えない橋やトンネルがある。


道路から直角に近い角度で曲がる橋の袂で、数年前にスキー客を乗せたバスが転落した。






・・・外灯の淋しい片側一車線、箱トラックの後を走っていると、観光バスのデフを搭載してるらしい活魚を積んだ大型が俺を含め3台まとめて追い越していく。


新潟ナンバーの暴走野郎は金属音を響かせて走り去る。


あちこちにあるドライブインはトラックの群れ、すれ違う大型の速度表示の緑ランプはみな3つ点灯させてる。


木曽路へと続く夜の国道は、孤独な旅人ばかりだ。






・・・一時間ほど走り国道を左に逸れると今までの爆音が嘘のように静まりかえり、県道はクルマも人も顕れない。慎ましく生きる人たちは眠る時間なんだろう。


外灯など何もない山道を走っていく、ハイビームに照らされ寄ってくる蛾がライトやフロントガラスに衝突して麟粉だらけになった。


4kmほど登った集落の外れに土壁の納屋がポツンと建っていて、俺はその納屋のそばにクルマを停めた。


ドアを開けて外に出ると、少し離れた水田の蛙の鳴き声がうるさい。


俺は車載の懐中電灯を点け、ビニール袋を提げて二階建ての納屋に入る。


急勾配の階段を上がる途中、野良猫が飛び出して逃げた。


廃墟のような納屋の二階には、何年も前の藁束がそのまま積まれている。


乾きに乾ききった柱と埃、粗縄で締めてある木の梯子、背負う布が擦り切れた魚籠、朽ち掛かった壁に立てかけられている背負子。


梁から吊るされた細い横木には、かつての今頃は収穫されたニンニクがぶら下がっていて香ばしい匂いをたてていた。


俺は藁束を崩して寝床を作りその上に座り、ビニール袋のREDを出してラッパ飲みする。


腹が減ってきてパンと握り飯を喰い、水がわりにREDで流し込む。


蛙の合唱に混じってフクロウの鳴き声が遠く近く聞こえた。


「・・・なにもかわらねえ、ここはなにもかわらねえ。」





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