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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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5速MTの灰色スターレットは、地味な見た目と裏腹にサスペンションとブレーキ・クラッチを強化していた。


現行はEFI制御だが、こいつは「KP」という旧型のキャブレター仕様。


そいつも社外のものと変えてあるらしく、ノーマル車とは比べものにならないほどグイグイ引っ張っていく。


革張りの重い小径ステアリングが丁度いい。






俺の腕時計は午後11時を少し過ぎていた。


手入れが整っていない市道はツギハギだらけで補修舗装の継ぎ目が粗く、サスの硬いスターレットは小刻みに跳ねる。


コンクリート製の横断水路の前後では、派手にショックが伝わってくる。


注意して走っていたが照明の暗い橋とのジョイントに差し掛かった時、クルマは大きくバウンドした。


「ちっ!」と舌打ちした途端、頭の上のサンバイザーから何かが落ちてきて、俺の頭に当たり膝の上に落ちた。


橋を過ぎたバス停にクルマを入れ、落下物を手にする。


厚い封筒だった。閉じていない封筒から一万円札がのぞいている。


数えてみると30万円。ほかに一枚の便箋が入っていた。




『山浦祥司様。   園部俊之という男を失った悲しみ、苦しみ、悔しさは俺も同じだと思っている。


トシが亡くなった翌日から、常に警察や刑事がつきまとっている。クシカワの件以降、徹底的に目を光らせてるようだ。


完全にがんじがらめだ。こんな形でしかお前に伝えられないことが、悔しいし申し訳ないと思う。



許せない事、許しちゃいけない事。俺も同じだ。


一緒に地獄に行く覚悟は出来てるからな。




電話はするなよ、細工されてるようだ。   玉井忠雄』



尖った達筆な字で綴られていた。クルマも玉井が用意したものなんだろう。


その封筒もグローブボックスにしまい、スターレットを出した。






間もなく国道へ出た。長距離トラックたちの孤独な疾走に合流して、俺も西へと走り出す。


ただただ西へと。



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