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「ニュータイガース」というパチンコ屋のネオンは派手な蛍光管でギラギラしていた。
入り口に近い駐車スペースが空いていたので、そこに停める。
クシカワから聞き出したカザマの行動は、夕方に組事務所を出ると歩いてこのパチンコ屋でしばらく打ってから帰るのが日課だという。
背が170cmぐらいで筋肉質、パンチパーマに口髭で夜でも薄い茶色のサングラスを掛けていると言っていた。
絵に描いたようなチンピラ野郎のスタイルだ。
ニュータイガースに入り、カザマらしき人物を探して歩く。
俺はパチンコはまったくやらないので、機械の回る音・店員がマイクでなにか喚く声が騒々しくてたまらない。
・・・店内はさほど混んでないので、想像通りのカザマを発見するのに時間は掛からなかった。
カザマと思われる男はタバコをくわえて不機嫌な顔で機械を睨みながら打っている。
機械のそばに玉を入れる箱がないので出ていないのだろう。
俺はそっと近づき、カザマと思われる男の左肩を叩く。
ゆっくりこっちを振り向いた顔は怒りに歪んでいた。
「なんだ、てめえは?」
俺はゆっくりとポケットから一枚の名刺を出し、ヤツに見せた。
「(有)玉井給油所 主任 園部俊之」
・・・トシが「こんなもんいらねえのに親父さんが作りやがってさぁ、どこの誰に配るんだよー。」と笑いながら俺にくれた名刺だった。
「だいたいさぁ主任てどんな役職だよ、親父さんと俺と克也の野郎しかいねえスタンドだぜー。」と言いながらその玉井の気持ちが嬉しくて、ちょっと自慢気だったトシ・・・。
それをカザマと思われる男に見せると、確かに顔色が変わった。
「コイツのことで聞きてえことがあるんだが。」と言うと、「ちょっと待ってろ。」と言い残玉を打ち尽くして立ち上がった。
俺とカザマは並んで店を出て裏側の暗闇に歩いて行く。店内の騒々しさが聞こえない闇の真ん中で足を止める。
お互いに向き直るとカザマが言った。
「・・・てめえは誰だ、俺のことを知ってんのか。」
「・・・ああ、カザマシンジ、誠龍会の下足番のチンピラだよな?」
「下足番のチンピラ?・・・面白えな小僧、ブチのめされなきゃ判らねえようだな、・・・ところで俺のことを誰から聞いた?」
「お前のうじ虫仲間のクシカワっていう色男だよ。」
「うじ虫だと!・・・今日クシカワは事務所に来なかったが、・・・てめえ、野郎になんかしやがったのか!」
「色男は女とネンネしてんじゃねえのか、頭の足りねえ女にはモテそうな野郎だったからな。」
「この野郎!なめやがって、ふざけんな!てめえは何者だ!」
カザマはポケットから短めの匕首を出し、鞘を抜いた。
「・・・俺はな、鬼って名前だよ。」と言って、ナイフの刃を起こした。