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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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俺は拳銃の銃口をクシカワの口から抜いた。


「園部・・・園部俊之を殺ったのはお前だな。」


「・・・・・・知らねえ、あんたは誰だ?」


・・・俺は即座にヤツの右手を捻りあげ、その小指を遠慮なくへし折る。


脂汗を浮べて呻き声を上げるクシカワに言う。


「俺が何者か後で教えてやる。そんな事よりお前は自分の状況ってもんを考えろ。・・・聞ける材料はまだ7本ある。・・・指だけじゃねえ、いくらでもあるぜ。」


クシカワは震えだし「わかった、何でもしゃべるから勘弁してくれ!」と哀願した。


「・・・でも組織の人間には絶対話さねえでくれ、殺される。」と念を押して。


俺が頷いて見せるとヤツはため息をひとつつき、話しはじめた。






「・・・組の上の方からフジタの兄貴に命令があって、厄介な野郎がいるからそいつの妹を拉致して、その解放条件にヤツを黙らせろと言われた。」


「・・・・・。」


「攫ってきたのはいいが妹が激しく抵抗しやがって、そうこうしてるうちにフジタの兄貴と俺、あとカザマの3人で犯しちまった・・・。それで妹がキチガイみてえになっちまったから、面倒くさくなって街中に放り出した。」


「・・・・・。」


「俺等は組の上の者にこっぴどくやられた。・・・そんで翌日、俺等が飲んでる店に園部が来やがってエラい剣幕で俺等に突っかかってきたから、なにも知らねえと言って店の裏でヤツにヤキを入れた。」


「・・・・・。」


「そしたら野郎、一日経ってから懲りもせず事務所に包丁持ってきやがった。あのバカ野郎命知らずもいいとこだ。・・・俺等3人は野郎を連れ出し徹底的に痛めつけて始末したんさ。」


・・・クシカワは今の惨めな自分の状況を顧みず、最後の方はどこか誇らしげに話した。


俺は脳天まで怒りが達していたが、なんとか冷静に振舞った。


それから「フジタ」と「カザマ」の素性や住所や家族、女のことを聞きだした。






「・・・なぁ、あんたは誰だい?・・・これで全部話した、勘弁してくれるんだろうなぁ?」


クシカワは腹の中のものを全て曝け出したから、解放されると思ってるらしい。


・・・この愚か者に俺の無二の親友のトシが殺られたのか・・・。


俺は靴下をまた口の中に入れ猿グツワをした。呻きながら頭を振り回し「約束が違う」とばかりにクシカワが抵抗する。


「・・・俺はな、園部のマブダチだ。ヤツがお前らみてえなクズに殺られたと思うと情けなくなるが、俺はな園部の成れの果てを見た時、ヤツに誓ったんだよ。・・・俺はトシが受けた悲しみや悔しさや苦痛を、そっくりそのままお前らクズどもに返してやるとな。」


クシカワは這って逃げようとした。俺はヤツの髪の毛を掴んで引き寄せ、硬く握ったナイフを腹に突き立てる。


トシの全身に刻まれた刺し傷はいくつあったのか判断出来なかったが、俺は憤りの衝動のままにクシカワに突き立てる。ヤツの懇願の呻きなど耳に入らない。


「お前みてえなクズは生きる資格などねえ!」


俺は圧し殺した声で叫んでいた。


右拳の下側に向けた鋭利な刃は、憎しみの力を伴いヤツの身体に吸い込まれ、噴き上げる血が俺の顔や身体に返ってくる。


自分の怒りの力の凄まじさに驚きながらも、手は休む事を知らない。






俺が対峙してるものが正体不明の赤い血ダルマになった頃、いくらか興奮が収まってきた。


クシカワの生温かい血を全身に浴びて、荒い呼吸をしている俺は人間とは言えない形相だろう。


着ているものが真っ赤に染まりあがっても、このクズに対する怒りはまだ完全には収まらない。


ヤツのベッドの横に置いてあった白鞘の匕首の鞘を抜き、ヤツの身体のド真ん中に渾身の力を込めて突き立てる。



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