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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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部屋の中はタクティクスの香りが充満していた。


俺はコロンをつける習慣がないので、男が人工的な匂いをつけているのが理解できない。


高校の頃、女を口説くことのみに精を出してたクラスメイトが放つ匂いが気になって聞いた時に「タクティクスだよ、お前知らねえの?」と自慢気に言ってたムカつく顔と匂いを不意に思い出した。



俺はクシカワの両脇に腕を入れ突き当たりのリビングまで引きずっていく、コンバースは履いたままだ。


身長は俺と同じぐらいだから175cmはありそうだが、華奢な体格なので大した苦労もない。


リビングまで引きずった時、ヤツの右足が部屋の隅のゴミ箱に当たって倒れた。


ティッシュやビニール袋が散乱した中に、一枚の免許証が混じっていた。


俺はそれを拾い上げた。


真面目な表情でこっちを見つめる「園部俊之」のものだった。


免許証は泥に汚れ、「く」の字に折れ曲がっていた。






カッと体の芯が熱くなって、怒りのためか免許証を持った手は小刻みに震えてきた。


奥歯をくいしばりながら、曲がりを直し泥を拭ってポケットにしまう。


・・・俺は完全に覚悟を決めた。


左の尻ポケットのロープでヤツの両手を後ろ手に縛り上げ、両足も縛り上げる。


洗面所へ行き洗濯物のカゴからヤツが履いた靴下を片足分持ってきて口に中に突っ込み、足を縛ったロープを少し切り取り猿グツワをかませる。


左手の小指を逆に反らし躊躇なくへし折る。


クシカワが気絶から目を覚ました。


飛び出しそうに血走った目玉を見開き、なにか叫ぼうとしているが猿グツワのために声にならない。


「うー!うー!」と呻きながらエビのように身体をくねらせるヤツの尻を蹴飛ばす。


苦痛でおとなしくなったヤツの左手をつかみ、薬指もへし折る。


関節が抵抗をなくすと、あとはプラプラだ。生木を折るより簡単なもんだ。


クシカワは恐怖で失禁して、ペルシャ絨毯の上に染みを作った。


ポケットから切れ味抜群のナイフを出すと、ヤツは這って逃れようとした。


後頭部を蹴飛ばしおとなしくさせると、猿グツワのロープを切断した。


詰められた靴下を吐き出すと、また鳥のように騒いだ。


仕方なくヤツから取り上げた拳銃を口の中に突っ込むと、涎を垂らしながら氷のように身体を硬直させた。


「鬼が来たぜ、歓迎してくれや。」


圧し殺した声で、俺はクシカワに挨拶した。



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