表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けの疾走  作者: 村松康弘
16/78

16


俺と克也は何も言葉を交わさない。


時折、克也が思い出したようにしゃくり上げたが、俺は無視していた。





17:00


地下駐車場のシャッターが上がり、センチュリーが出てきた。


センチュリーは左半分を歩道に乗り上げ、窓に真っ黒のフィルムを貼った運転席から男が降りてきた。


「・・・あいつです、クシカワ。・・・あの野郎・・・。」


くわえタバコで降りた男は、25ぐらいの色白の男だ。


オールバックにした頭髪に一重の三白眼、黒い開襟シャツに白いスラックスに白い革靴。


アンパンで溶けたような前歯のすき間にタバコをくわえている。


クシカワは歩道に唾を吐き、玄関に消えていった。


俺は「クシカワアキノブ」の姿とツラを脳に刻みつける。





クルマを出し、玉井のスタンドへ向かう。


克也は俺の顔を覗き込み不可解な顔をしていたが、俺は気付かない振りをした。


スタンドに着くと玉井が、一緒に駅まで石和のおばさんと美弥を迎えに行こうと言ったが断った。


俺は自分のクルマに乗り替えアパートに戻る。


ガラスのテーブルの上の「クシカワアキノブ」のメモを見た時、胸が閊えて泣きそうになったが、なんとかこらえた。


念のために電話帳で検索してみたが、やはり載ってはいなかった。


クローゼットから黒いジーンズと黒いTシャツを出して着替える。


高校の頃から使っている黒革の財布と、国産のチャチなダイバーズウォッチを身に付ける。


小物入れの引き出しから刃渡り10cmほどの小さい折りたたみナイフを出して、刃を開いてみた。


刃物研ぎの上手な親父が買ってくれたものだ。


それをジーンズのポケットにつっこみ、部屋を出た。


途中、沢田モータースへ電話を入れる。フロントの松木から少々文句を言われたが、しばらく休むと言って一方的に電話を切った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ