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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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午前9時、警察署の玄関を出る。


照りつける太陽が眩しく、気温も相当上がっているようだ。


俺と玉井・克也は別々の小会議室のような部屋で、尋問された。


俺は数日前にトシが転がりこんできた事や美弥の事を、一切口にしなかった。


トシと最後に会ったのは、一週間前の玉井のスタンドという事にしておいた。


あとは今までのつきあいを簡単に話しただけだ。


片山刑事は、俺の話の矛盾点や辻褄が合わない事を探り出そうと、しつこく同じ事を聴きいちいち確認させた。






・・・駐車場に玉井のクルマはなかった。俺はクルマの窓を開け、換気してから乗り込んだ。


灰皿の中の長めの吸殻を指で伸ばして火を点ける。


途中、自動販売機でハイライトを買って、玉井のスタンドへ向かった。


街中の景色は昨日となにも変わってはいない、ひとりの若者が残酷な死を遂げようとも。





スタンドの隅に玉井のグロリアが停まっていたが、入り口の黄色いプラチェーンは掛かったまま「定休日」の看板が出ていた。


チェーンを外してクルマを入れ、またチェーンを掛けた。


事務所では玉井が、ひっきりなしにどこかに電話をしていた。


一旦受話器を置いた時に、「石和のおばさんと美弥ちゃんが、こっちに向かってる。」と、力なく呟いた。


克也はスタンドの整備スペースのタイヤに腰を下ろし、腑抜け同然の顔をして俺の方を見もしなかった。


「克也、一緒に来てくれるか?」


ヤツはゆっくりこっちを向くと、目を合わさずにうなづいた。


玉井に鍵を借り、スタンドの軽自動車で克也と店を出た。


警察に尾行されてないか、時々狭い路地に入り様子を伺いながら、繁華街方面に向かった。


夕べの克也の話から、下品なセンチュリーが以前、暴力団「誠龍会」の前に停まっていた事を思い出したからだ。


繁華街を少し過ぎたところに「誠龍商事」と窓に書かれた4階のビルがある。


そのビル全体が見渡せる路地にクルマを停めた。


窓の向こう側に人影は見えない、地下駐車場に出入りするクルマもない。


「クシカワって野郎、見れば判るよな?」


「わかります。」


俺はシートを倒して、タバコに火を点けた。箱を振って一本出してやると、克也は黙って抜いた。


自分のポケットからライターを出して、火を点けた。




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