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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
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外は変わらず土砂降りだった。


自分のアパートに辿りつくまで、俺の脳は目の前の景色を認知していなかった。


「・・・おおげさに考えることじゃねえよな。」口に出してみる。


玄関を開け6畳の部屋のカーペットに寝転がりテレビをつける、プロ野球ニュースがやっていた。


・・・テレビの画面にハエが一匹止まった。


俺はゴミ箱の横に置いてある殺虫剤に手を伸ばす。ふと、ゴミ箱の中に目が行った。


丸められた紙屑がひとつ、拾い上げ伸ばしてみた。


「クシカワ アキノブ 2**-****」鉛筆で書いたトシの字だ。


テーブルの上に置き「クシカワ」なる人物を自分の記憶と照らし合わせてみる。


思い当たる人間はいなかった。






6:00


・・・いつもの時間に目が覚めた、いつの間にか眠っていたようだ。


カーテンを開けると昨日の雨は止んでいて、朝から晴れている。


俺はいつものようにジーンズをはき、クルマに乗り込み会社へと向かった。


いつもの道をいつも通りに走る、・・・ただアタマの中はトシの行方と「クシカワ」という人物のことが渦を巻いている。






今日の担当車両は、ありきたりの1500ccのセダンの車検。


5年前のクルマだから2回目の車検。安普請のクルマだから壊れるところは大抵決まっている。


リコールで対応するほどではない頻度の事例の場合、メーカーから「点検依頼」の通達が回って来ている。


このどうでもいいクルマは異常なしだった。



19:00


整備を終えリフトからクルマを降ろしていると、「山浦、玉井のオヤジから電話だぞ」と工場内スピーカーで呼ばれた。


ウエスで手を拭いながら事務所に入り、受話器を取る。


「・・・ショウさ、これからウチに来れねえか?」


「なんかあったんすか?」


「・・・うーん、電話じゃさ・・・とにかく来いや。」


「わかりました。」


手早く着替えてタイムカードを挿し、クルマに乗り込む。


夕闇の市街地はいつも通り混雑している。



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