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夜明けの疾走  作者: 村松康弘
1/78

19:35


全開にした車窓の外音も聴こえないほどデカくしたカーステレオのボリュームを2割ほどに落とした。


「sunshine of your love」友人からもらったカセットテープ。


友人はあげたつもりはないかも知れないが。


もともと、そいつも「あげたつもりはない」と思ってる友人からもらったものだ。


・・・そんな風に俺等は知らぬ間に自分の所有物をなくして、知らぬ間に誰から来たものか判らないものを我が物顔にしてた。


俺の黒いセダンのカーステレオはチャチなもので、カセットを挿入口に入れると「ガチャン」と無機質な音を立て再生をはじめる。


あとは「取り出し」の両となりの「早送り」「巻き戻し」の硬い四角のボタンしかない。


音質の制御は「TONE」のみだから、音の世界に浸りたければ「VOL」を上げるしかない。




・・・ハイライトをもみ消し、駐車場の「101」と書かれた区画にクルマを停める。


コンビニの袋を片手にクルマの鍵を閉め、名前だけがハイカラなアパートの玄関の鍵を開ける。


途端に流れ出す真夏の締め切った6畳1間の熱気だけが出迎えてくれる。




俺は汚れた靴下を脱いで洗濯機に放り込み、部屋の窓を開けて扇風機を回す。


ママゴトのようなキッチンで手を洗い、今夜食う分の米を袋からすくって水に浸す。


短い爪は黒いオイルの縁取りで、俺以外の人間はこの手で研いだメシを喰う気になるヤツはいねえだろうと苦笑いしながらくわえタバコで米を研ぐ。


タイマーもない炊飯器から蒸気が上がり、無理矢理炊かれた芯のあるメシをよそい、120円のボンカレーを掛けて食う。


食い終わったら大瓶のサントリーのREDをコップになみなみ注ぐ。何杯飲むかはその日の記憶しだい。


ガラスのテーブルに頬づえをついて、ぼんやりとテレビを眺めながら眠くなるまで。


7月18日は3杯飲んで倒れこんだ。




「ガン!ガン!・・・ガン!・・・」


東面の窓を叩く音で俺は目を覚ました。


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