第一章10 女神と初めての魔物討伐(2)
さあ、記念すべき第一戦、開始だ!
さあて、まずは足を狙うのか。
足を狙うとなると、武器屋で買った大剣は使いにくいな……。
ならば、武器屋で大剣とセットで買った短剣を使ったほうがいいかな。
俺は腰につけたホルダーから短剣を取り出して、手に持つ。
この短剣は、なんと、持ち手横のボタンを押すと剣先が伸びるのだ!
ジャキンっと音が鳴って剣先が展開する。
伸長した状態なら、距離を保ったまま前足に斬撃を与えることができそうだ。
「さあ、かかってこい!」
俺の呼びかけに応じるように、グーグリオがジャンプして襲いかかってくる。
ジャンプといっても高さ十センチ程度だけど……。
後ろからリリアの声が聞こえてくる。
「ハルト! ジャンプの後、グーグリオは体制を整えるため動きを止めるわ。その隙に前足首に切り掛かってダメージを与えるのよ!」
「了解です、隊長」
グーグリオと目が合う。
グーグリオが身を低く沈める。
俺は短剣を右手で持って、構える。
グーグリオが俺の右足に目掛けて跳躍する。
俺は左足を前に出して、グーグリオの左側に回り込む。
そして、右手を振り下ろして、グーグリオの右前足を斬る。
グーグリオと距離を取るため、俺はグーグリオの後ろへ駆け抜ける。
「グォー!」
グーグリオの鳴き声が反響する。
グーグリオが俺の方へ向き直る。
俺は再び短剣を構える。
グーグリオが俺に飛びかかる。
今度はグーグリオの跳躍に合わせて一歩後ずさり、クーグリオとの距離を保つ。
着地したグーグリオの左前足首に斬りかかる。
「グォルル!」
グーグリオの両前足から血が流れる。
「グォォ……」
グーグリオは呻きを残して硬直した。
すかさずリリアの声が飛んでくる。
「ハルト、さっき確認した火炎魔術は覚えてる?」
「ばっちり」
「えらいわ!」
えへへへ。
「ハルト、今よ!」
ようし。
「さあ、グーグリオをひっくり返すのよ!」
了解!
『地炎』
クーグリオの腹の下に亀裂がはいる。
その亀裂から噴き出る炎。
グーグリオが火柱に吹き飛ばされる。
決まった!
……あ、……。
……まずい……。
グーグリオが天井に叩きつけられる。
地鳴りのようなドォォンという低音が、ダンジョンの空気を震わせた。
崩れ落ちる天井。
……まずい。
……まずいまずいまずいまずい!
このままだと落ちてきた瓦礫の下敷きになってしまう……!
「何やってるのよっ!」
真横から飛んでくる女神の叫び声。
女神が両手を広げて俺に突っ込んでくる。
女神に抱えられた俺は、女神の飛んだ勢いのままダンジョンの床を転がった。
壁にぶつかる女神と抱えられた俺。
崩れた天井が地面を叩く音が頭に響く。
舞った土埃が顔にかかる。
轟音が鼓膜を震わす。
俺たちは身を縮める。
……どうやら落ち着いたようだ。
恐る恐る目を開く俺とリリア。
グーグリオと戦っていた場所に、大きな瓦礫の山ができていた。
「あっぶなぁ……」
「間一髪だったわ……」
俺とリリアは床に転がったまま顔を見合わせる。
「……ふ、ふふっ」
「……はっははは」
俺とリリアは思わず吹き出してしまう。
「あーあ、面白かった」
「初っ端からこんなに面白いことになるとは思ってもいなかった」
俺とリリアは立ち上がってダンジョンの奥へと歩みを進める。
「あなたのことが心配でlv. maxにしたの。それが間違いだったわ」
「もっと段階を踏むべきだったな」
「lv.maxは当分無しにしましょ」
「そうだな」
〜〜〜〜〜〜〜
グーグリオしかいないダンジョンから聞こえた爆発音に何事かと駆けつけた一人の少女。
恐る恐るダンジョンの階段を降りる。
降りて右側の通路を進む。
「?!」
少女は言葉にならない声をあげる。
そこにあるのは、崩れ落ちたダンジョンの天井の残骸。
少女は混乱する。
「どうして……?」
ダンジョンは……。
「……人の手では傷一つつけることすら不可能……」
魔物の力をもってしてもダンジョンの壁を壊すことはできないはずなのに……。
薄暗い通路の奥から微かに声が聞こえてくる。
きっと魔物の声だわ。
それも、圧倒的強者の。
少女の顔が真っ青になる。
少女が強く握っている肩紐が震える。
背負っている籠に積み上げられた薬草が、地面に落ちた。
次回更新 第一章11 女神と冒険者とダンジョン攻略 2/10 23:00 更新予定




