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勇者召喚されたけど、勇者の結末はロクでもないのが相場なので疑ってかかってます~やだこの勇者全然言うことを聞いてくれない~  作者: ターシ


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第9話 勇者は、赤い目と対峙する


 ――剣を振るった、その瞬間。


 俺の体は、考えるよりも先に動いていた。


「――っ!」


 横薙ぎ。

 踏み込み。

 返す刃。


 狼の群れが、次々と倒れていく。


(な、なんだこれ……)


 剣を振っている感覚はある。

 だが、どこか他人事みたいだった。


(俺が動いてるんじゃない……スキルが、動かしてる)


 牙が迫る。

 反射的に体を捻り、剣を突き出す。


 手応え。

 温かい感触。


「っ……!」


 怖い。

 間違いなく、怖い。


 ついこの前まで、ただの高校生だったんだ。

 剣で生き物を斬るなんて、現実感がない。


 それでも――


「……っ、来るな!」


 叫びながら、剣を振る。


 数は多い。

 だが、一匹一匹の動きは単純だ。


(……見える)


 次に、どこから来るか。

 どのタイミングで跳ぶか。


 気づけば、足元には動かなくなった狼たちが転がっていた。


「……はぁ……はぁ……」


 息を整える。


(……終わり、か?)


 そう思った、その時だった。


 ――視線。


 森の奥から、はっきりとした“見る意思”を感じた。


「……」


 ゆっくりと姿を現したのは、一回り大きな狼。


 群れの中でも、明らかに格が違う。

 そして――赤い目が、俺を見据えていた。


(ボス……か)


 俺が剣を構えると、ボス狼も低く身を沈めた。


「……」


 一瞬の静寂。


 踏み込む。


 ――かわされた。


「……っ!?」


 今のは、偶然じゃない。

 狙いを読んで、避けられた。


(こいつ……)


 もう一度、斬る。

 角度を変えて、速く。


 ボス狼は後退し、距離を取る。


(見てたな)


 さっきの戦いを。

 俺の動きを。


(知性が、ある……)


 嫌な汗が背中を伝う。


「……面倒だな」


 でも、引くつもりはなかった。


「――《連斬》」


 連続する斬撃。


 一撃、二撃。

 ボス狼がかわす。


 三撃目。

 牙で弾かれる。


(……対応してくる)


 だが――


 四撃目、五撃目。

 連続する動きの中で、ついに隙が生まれた。


 剣が、深く突き刺さる。


 ボス狼は短く吠え、そのまま倒れた。


 静かになった森。


「……」


 剣を下ろす。


(結果だけ見れば、無傷の圧勝……)


 倒れたボス狼を見る。


(でも、対応されたな……)


 今までの魔物とは、明らかに違った。


(これが……使役魔物)


 嫌な予感が、胸に残る。


 ――――――――


 村に戻ると、人だかりができていた。


「無事か!?」

「魔物はどうなった!?」


「全部、倒しました」


 一瞬の沈黙。


「……一人で?」

「あの狼の群れを、か?」


「ええ。目が赤く、自然魔物では考えられない統率でした。」


「……そうか」

「やはり、使役魔物だったか……」


 ざわめきが広がる。


 村長が、深々と頭を下げた。


「本当に……ありがとうございました」


「いえ」


 俺は首を振る。


「当然のことをしただけです」


 それから、少しだけ言葉を選んで続ける。


「それと……お礼は不要です。ですが、食料を売っていただけませんか」


「なに……?」


「代金は、きちんと払います」


 ざわ、と周囲がざわめいた。


「食料がほしいならお礼ということで持って行ってもらえれば……」


 周囲の村人たちも、うんうんと頷いている。


 どうやら、この村はまだ余裕があるらしい。

 狼たちは、人ばかりを狙っていて食料には手をつけていなかったみたいだ。


 それでも――


「いえ。しっかり、お金は払います」


「なっ……」


「助けてもらったのに、そんな……!」


 俺は、はっきりと言った。


「見返りを求めるために、やったわけではないので。」


(……難癖は、最初から潰しておく)


 村人たちは顔を見合わせ、やがて苦笑した。


「……なんとも、律儀なお方だ」


「分かりました。では、売るという形にしましょう」



 こうして俺は追加の食料を確保し村を出た。


 歩きながら狼たちとの戦闘を思い出す。


 使役魔物。

 魔族。


(慎重に行かないと……)


 この世界、思った以上に油断できない。






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