表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚されたけど、勇者の結末はロクでもないのが相場なので疑ってかかってます~やだこの勇者全然言うことを聞いてくれない~  作者: ターシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/62

55 勇者は、魔王と戦う


 魔王アルバ・レウスが、静かに一歩踏み出した。


 それだけで、玉座の間の空気が変わる。

 魔力が溢れるのではない。圧し潰すように満ちる。


(……来る)


 直感と同時だった。

 魔王の姿が、掻き消える。


「っ!」


 反射的に剣を振る。

 次の瞬間、重い衝撃が腕を打った。


 ――拳。


 剣で受けたはずなのに、魔王の拳に傷はない。

 肉体そのものに魔力を纏わせた、純粋な打撃。


 衝撃が床へ逃げ、石畳が砕け散る。

 俺の体が後方へ吹き飛ばされた。


「……素手、かよ」


 着地と同時に転がり、距離を取る。

 息を整える暇もない。


 魔王が、すでにそこにいた。


 振り下ろされる掌。

 回避が間に合わない。


 俺は障壁を張る。

 だが――


 バキン、と嫌な音がした。


 障壁が、砕けた。

 そのまま衝撃が伝わり、体が宙を舞う。


「ぐ……っ!」


 壁に叩きつけられ、肺から空気が抜ける。


(……重い)


 技でも術でもない。

 ただ、力と魔力だけで殴ってくる。


 ただそれだけのに、強い。

 正確で、無駄がない。


「どうした、勇者」


 魔王が言う。

 声は、驚くほど落ち着いていた。


「万全の状態だろう。ならば立て」


 煽りではない。

 本当に、そう思っている口調。


 俺は歯を食いしばり、立ち上がる。

 剣を握り直す。


「……言われなくても」


 踏み込む。

 今度は、こちらからだ。


 剣聖補正。

 覚醒。

 英雄。


 すべてを乗せた斬撃。


 魔王は、避けない。

 拳で受ける。


 ──初めて、鈍い音がした。


 魔王の腕に、薄く血が滲む。


 ほんの一筋。

 だが、確かに――届いた。


 玉座の間に、静寂が落ちる。


 魔王が、自分の腕を見る。

 そして、ゆっくりと笑った。


「……なるほど」


 満足そうな声。


「さすがだ、恒一。四天王をすべて倒しただけはある」


 魔王は、一歩下がる。

 そして、掌を広げた。


 空間が、軋む。


 玉座の間に満ちていた魔力が、一点へと集束していく。

 低い共鳴音。

 空気が震える。


 次の瞬間――


 そこに現れたのは、一本の槍だった。


 三つの刃を持つ、長大な槍。

 中央の刃は真っ直ぐに。

 両脇の刃は、世界を挟み取るように湾曲している。


 ただ存在するだけで、空間の魔力の流れが変わる。


「よかろう」


 魔王は、それを手に取った。


「我も、武器を出そう」


 槍を軽く地に突く。

 その衝撃だけで、床にひびが走る。


「この槍の名は──」


 一瞬、間を置き。


「《トリス・レギオン》」


 そして槍から、かつてないほどの圧が飛んできた。


「破壊、創造、均衡。その三つの権能を束ねる、王の槍だ。」


 俺は、無意識に剣を強く握っていた。


(……ここからが、本番か)


 魔王は槍を構える。

 先端が、こちらを正確に捉える。


 次の瞬間。


 槍が振るわれた。

 空間が、歪む。

 衝撃波が玉座の間を薙ぎ払った。


 俺は、全力で地面を蹴る。

 紙一重で回避するが、余波だけで体が弾かれる。

 壁が崩れ、瓦礫が舞う。


 魔王が、静かに告げた。


「見せてやろう、勇者」


 手を前に出しながら。


「世界を、保つ力を」


 トリス・レギオンの刃が、淡く光る。


 戦いは――

 次の段階へと、踏み込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ