表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚されたけど、勇者の結末はロクでもないのが相場なので疑ってかかってます~やだこの勇者全然言うことを聞いてくれない~  作者: ターシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/62

54 勇者は、魔王と語る


 玉座の間は、静かだった。


 扉が閉じる音が反響する。

 それを合図にしたように、外界の気配が完全に遮断された。


 俺と、魔王。

 この広間には、その二つの存在しかいない。


 魔王は玉座に腰掛けたまま、動かない。

 威圧するでもなく、力を誇示するでもなく、ただこちらを見ている。


「完全回復……使ったな」


 唐突な一言。


 だが、驚きはなかった。

 不思議と、見抜かれて当然だと感じた。


「世界の裏側を覗いた者にだけ見える条件だ。四天王をすべて越え、ここまで来た勇者に与えられる、世界の調整機構」


 淡々とした口調。

 まるで、天候の話でもしているようだ。


「……知ってたのか」

「知っている、というより、理解している、だな」


 魔王は、わずかに口角を上げた。


「世界は放っておくと壊れる。だから均衡を保つ仕組みがある。勇者、魔王、四天王……そして条件」


 俺は黙って聞く。

 ここで口を挟ぐ気にはなれなかった。


「お前は優秀だ、相川恒一」


 名を呼ばれ、わずかに眉が動く。


「力だけではない。疑い、考え、選び続けた。その結果が、ここだ」


 魔王は玉座から立ち上がった。

 一段、また一段と、ゆっくり階段を下りてくる。


「だからこそ、提案がある」


 距離はまだ遠い。

 だが、空気が一段重くなった。


「どうだ?」


 魔王は、はっきりと言った。


「我と手を組まぬか。勇者」


 思ったよりも、率直だった。


「四天王をすべて倒すその力は素晴らしい。人間側に戻るには、あまりにも惜しい」


 魔王は、両手を広げる。


「共に世界を統べよう。そうすれば──」


 声が、低くなる。


「世界の半分を、お主に渡そう」


 あまりにも有名な台詞。

 どこかで聞いたことのある、王道中の王道。


 だが、不思議と笑えなかった。


(……本気だ)


 冗談でも、時間稼ぎでもない。

 魔王は、真剣に俺を『戦力』として見ている。


「人間に戻れば、どうせ疎まれる。勇者の力は危険だ、と恐れられる」


 胸の奥が、わずかに疼く。


「だが、こちらに来れば違う。力は力として扱われる。疑われることも、裏切られることもない。皆が、力のあるものに従う。」


 魔王は、俺を見据えた。


「生き残れるぞ。恒一。」


 一瞬。

 本当に一瞬だけ、迷いがよぎる。


 だが――俺は、ゆっくりと首を振った。


「悪いけど」


 声は、思ったよりも落ち着いていた。


「俺は、世界を牛耳りたいわけじゃない」


 魔王は、黙って聞いている。


「疑われるのも、利用されるのも、正直うんざりだ。でもな……」


 剣の柄に、手をかける。


「それ以上に、誰かの上に立つのは性に合わない」


 魔王の目が、わずかに細くなった。


「それに」


 一歩、前に出る。


「お前と組んだら、絶対あとで『やっぱ勇者危険だから消そう』ってなるだろ」


 一瞬。

 玉座の間に、沈黙。


 そして。


 魔王は、静かに笑った。


「……信じられぬ、か。ならば、仕方あるまい」


 魔王の魔力が、ゆっくりと広がる。

 嵐の前の静けさのように、静かで、重い。


「ここで終わらせよう、勇者、相川恒一。我は魔王、アルバ・レウスなり。」


 俺は、剣を抜いた。

 刃が、澄んだ音を立てる。


「望むところだ。俺は相川恒一。アルバ、お前を倒すためにやってきた。」


 視線が噛み合う。

 次の瞬間、魔王が踏み出す。

 それが、この世界の結末を決める戦いの幕開けだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ