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勇者召喚されたけど、勇者の結末はロクでもないのが相場なので疑ってかかってます~やだこの勇者全然言うことを聞いてくれない~  作者: ターシ


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第5話 勇者は、親切を疑う


 村は静かだった。


 人がいないわけじゃない。

 だが、王都で感じたような活気はなく、どこか張り詰めた空気が漂っている。


(前線からそれほど遠くないって話だったな……)


 俺は村の入口で立ち止まり、周囲を見渡した。


 畑はある。

 だが、柵は壊れ、土は荒らされている。


(……獣か?)


 そのまま村の中へ入ると、すぐに数人の視線が集まった。


「……旅の方か?」


 年配の男が、警戒を隠さずに声をかけてくる。


「はい。少しの間、滞在したくて」


 俺がそう答えると、男は俺の腰にある剣にちらりと目を向けた。


「……兵ではなさそうだな」


(まあ、実際違うね)


「宿はあるでしょうか」


「……あるにはあるが」


 男は少し迷った様子を見せたあと、言った。


 「最近は客も来ない。部屋は空いている。代金は、あとででいい」


(後で、か)


「いえ、先に払います」


「……?」


「泊まるなら、先に対価を払うのが普通でしょう。」


 男は一瞬驚いた顔をしたが、やがて苦笑した。


「……変わった旅人だな」


(変わってて結構)


 少しでも難癖に繋がりそうなことは回避しないとな。


 宿に案内され、部屋に荷物を置く。


 粗末だが清潔で、寝るには十分だ。


(お金も払った。無料じゃない。よし)


 ひと息ついたところで、宿の主人が水を持ってきてくれた。


「少ないが飲んでくれ」


「ありがとうございます」


 水を口に含んだ瞬間、少し違和感を覚えた。


(……ほんとに量、少ないな)


 『つまらないものですが』みたいな意味合いの『少ないが』だと思ったけど。


 気になって、聞いてみる。


「水、貴重なんですか?」


 宿の主人は、少しだけ表情を曇らせた。


「……最近川の上流に、魔物が住み着いてな。近づくと襲われる。水を汲みに行けん」


(なるほど)


「畑もその魔物に荒らされている。グレートボアだ」


 四足歩行の大型魔物。

 突進力が高く、気性が荒い。


 ...だったか?王宮の簡易資料で見た気がする。


(自然魔物、か)


 魔物には、自然魔物と使役魔物がいる。

 自然はその通り野生に生きている魔物で、使役魔物は魔族が使役している魔物だ。

 魔族自体は数が少ない。だが魔物を使役することで魔王軍は大群となっている。


 今回は人を積極的に襲っているわけではないので、自然魔物だろう。


「村の兵は?」


「若い者は徴兵で取られた。残っているのは、年寄りと子供だけだ」


 宿の主人は、淡々と語った。


「このままじゃ、冬を越せん。水も食料も、蓄えが作れない」


(……かなり詰んでるな)


 主人そこまで言って、俺と目が合いハッとした顔で言った。


「……無理に頼むつもりはない。旅の人に押し付ける話じゃない」


(押し付けてこないのが逆に重い)


 俺は少し考えた。


 この人たちは、俺が勇者だなんて知らない。

 ただの旅人として扱っている。


(……好都合だ)


「場所だけ教えてもらえますか。水源と、畑の被害状況も。」


 主人が目を瞬かせる。


「……見に行くだけか?」


「ええ。確認だけです」


(動作確認とレベリング。ついでに地形把握)


「それで、何か分かれば」


 主人は、しばらく俺を見つめたあと、静かに頷いた。


「……分かった」


 夕方、教えられた水源へ向かう。


 川沿いの地面には、深い足跡。

 掘り返された土。

 折れた木。


(でかいな……)


 鑑定を使う。


─────────────────────────────────────

【魔物:グレートボア】

【状態:縄張り意識強・空腹】

─────────────────────────────────────


(完全にこの辺りが縄張りか)


無理に刺激すれば、村に突っ込む可能性もある。


(正面からやるのは……怖いな)


 正直なところ、心臓はバクバクだ。


 剣を握る手も、当然慣れていない。


(俺、ちょっと前まで高校生だったんだぞ……)


 でも、ここで引き返したら――


(また別の誰かが、水を汲みに来て襲われる)


 それは避けたい。自分の関わった場所で被害が出るのは精神的に重くなる。


 俺は一度深呼吸して、決めた。


(今夜だ)


 夜になれば、人の気配も減る。

 誘導できれば、被害を最小限に抑えられる。


 村へ戻ると、宿の主人が心配そうに声をかけてきた。


「どうだった?」


「……いました」


「今夜、少し外に出ます」


「危ないぞ!」


「大丈夫です」


(大丈夫じゃないけど)


「もし、何かあったら……」


「その時は、その時です」


 俺はそう言って、宿を出た。


 夜の森へ向かいながら、思う。


(勇者としての英雄ムーブじゃない。ただ計画的行動だ……多分)


 そうして、俺はグレートボアの縄張りへ足を踏み入れた。





今日中に7話まで投稿します。

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