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勇者召喚されたけど、勇者の結末はロクでもないのが相場なので疑ってかかってます~やだこの勇者全然言うことを聞いてくれない~  作者: ターシ


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49 勇者は、絶望の淵で助けられる


 もう、立っているのがやっとだった。


 肩は裂け、脇腹は抉られ、血が止まらない。

 呼吸をするたび、肺の奥が焼けるように痛む。


 視界の端が、暗い。


 影侵食。

 傷口から入り込んだ闇が、俺の力を奪っていく。


「終わりだ、勇者」


 影の者が告げる。

 その声は静かで、確信に満ちていた。

 周囲には、四体の影の者。


 どれか一人が本物。

 だがどれが本物かはわからない。

 しかも本物を見つけたとしても、入れ替わりで回避される。


 いや――


(違う……)


 俺は、霞む視界の中で奴らを見る。

 動き。

 位置。

 入れ替わり。


(……順番がある)


 これまでの戦いでわかった。

 入れ替わりは自由じゃない。

 流れがある。

 循環している。


 だが――


(わかったところで……)


 体が動かない。

 間に合わない。

 影の者と分身たちが、一斉に構える。


 闇の槍が、四本。


「これで終わりだ」


 振り上げられる。

 体が動かない。

 避けられない。

 防げない。


(……くそ)


 その時だった。


「――まだだよ」


 声がした。

 その直後――


 閃光。

 紫の魔法弾が、影の者の一体を横から撃ち抜いた。

 闇が弾ける。


「なに……?」


 影の者が初めて動揺の声を漏らす。


 その先。

 血だまりの中。

 倒れていたはずの男が――立っていた。


「……ラザル」


 俺は呟く。

 四天王、『情報』のラザル。

 胸を貫かれていたはずの男。


 だが、まだ生きていた。

 口元から血を流しながら、それでも笑っていた。


「勇者も……影の者も……どっちも魔王様の敵だけどさ……」


 ラザルは、影の者を睨む。


「殺されかけた恨みがある分……影の者に消えてもらうよ」


 影の者が低く唸る。


「貴様……まだ……」

「癪だけどね」


 ラザルが、俺を見る。


「今だよ、勇者」


 その目は、真剣だった。


 俺は、動く。

 残った力を振り絞り、床を蹴る。


 影の者へ斬りかかる。

 直感でしかないが、こいつが本物だと思った。

 そして剣が届く。


 だがその瞬間。

 影の者の姿が――揺らぐ。


 入れ替え。

 直感は当たっていた。

 だが、分身と本体の位置交換。


 俺の剣は、分身を斬り裂いた。


「無駄だ」


 背後から声。


「貴様には――」


 だが次の瞬間。

 再び、魔法が飛んだ。

 ラザルの魔法。


 一直線に。

 影の者の『本体』へ。


 直撃。

 闇が、大きく揺らぐ。


「――なに?」


 影の者の声に、明確な動揺が混じる。

 今のは、入れ替わる前に撃ってないとありえないタイミングだ。


「きさま……」


 振り返る。


「なぜ、ここの分身と入れ替わるのがわかった?」


 ラザルは笑った。

 血を吐きながら。

 それでも、誇らしげに。


「僕を誰だと思ってるのさ」


 一歩、踏み出す。


「四天王」


 そして言う。


「『情報』を司る、ラザル=メルディアだよ」


 影の者の沈黙。


「君の能力は解析済みだ」


 ラザルは続ける。


「影分身との入れ替えは、自由じゃない。決まった順番でしかできない」


 影の者の闇が、わずかに揺れる。


「そして、もう一つ」


 ラザルが、天井へ手をかざす。


「隠蔽解除」


 魔法が発動する。

 空間が、軋む。


 そして、何かが見えた。

 天井。

 そこに浮かぶ、黒い結晶。


 闇と同化していたそれが、姿を現す。


「あれが、この空間の核だ」


 ラザルが叫ぶ。


「あれを壊せば、この絶対影域は解除される!」


 ラザルが、俺を見る。


「やれ!」


 血まみれの顔で。

 それでも笑って。


「勇者!」


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