表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚されたけど、勇者の結末はロクでもないのが相場なので疑ってかかってます~やだこの勇者全然言うことを聞いてくれない~  作者: ターシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/62

47 勇者は、影に囚われる


 城は、さっきまでとはまるで別の世界だった。

 城内の空気が張り詰めている。

 遠くから、怒号が聞こえる。


「中庭だ!」

「四天王様が……!」

「侵入者がいるはずだ!探せ!」


 どうやら、ヴァルゼインとの戦いは完全に知れ渡っているらしい。


(そりゃそうか……)


 あれだけ派手に暴れたんだ。隠し通せるはずがない。


 だが――


(だからこそ、今は逆に動きやすい)


 混乱している時ほど、人は『見えているもの』しか見ない。

 見えていないものには、気づけない。


 隠密スキルにより誰にも見えない俺は、影から影へと移動する。


 角を曲がる。

 足音が近づいてきた。


 魔族の兵士が二体、槍を持って走ってくる。


「侵入者は人間らしい!」

「人間!? じゃあ表のゴーレムはなんなんだ!!」


 俺は壁の陰に張り付き、息すら止める。

 兵士たちは、俺の目の前を通り過ぎ――


 気づかないまま、走り去った。


(よし)


 俺は逆方向へ進む。

 ゴーレムの記録と、千里眼で把握した構造が頭の中で重なる。


 上へ。

 玉座の間は、最上階。

 そこへ続く階段へ向かう。


 途中、魔物がいた。

 狼型の魔物。

 見張りの魔物だろうか。


 たしかに狼は鼻が利いて索敵できるし、侵入者がいれば遠吠えで遠くに知らせられるし、足も速いので敵を逃がさない。


 だが――


 気づかれる前に、背後へ回り込む。

 剣を抜く。

 一閃。


 音もなく、魔物は崩れ落ちた。

 血が床に広がる前に、俺はその場を離れる。


 戦闘は避ける。

 だが、必要なら迷わない。


 進む。ただ進む。


 やがて――

 開けた場所に出た。


 長い長い、一直線の通路。


 そしてその先に――


 巨大な扉。

 黒くて、禍々しい装飾。

 間違いない。


(玉座の間……)


 あそこに、魔王がいる。

 魔王さえ倒せば、指揮系統は崩壊する。


 そうなれば、バラバラになった魔族を王国軍や冒険者たちで掃討すればいい。

 なにも四天王を全員倒す必要はない。


 軍は瓦解する。戦争は終わる。


 そう考え、俺は一歩踏み出した。


 その瞬間だった。


 ――暗転。

 光が消えた。


「……!?」


 違う、消えたんじゃない。


 塗りつぶされた。


 闇に。

 空間そのものが、闇に侵食されている。


 床も、壁も、天井も。

 何も見えない。


 だが――

 何かがいるのがわかる。


 気配が二つ。


「……ようやく、ここまで来たね」


 声が聞こえる。


「ようこそ勇者。僕は四天王、『情報』を司るラザルさ。そしてこっちが、四天王で『絶望』を司る、影の者だ。」


 闇の中から、二つの影が浮かび上がる。


「......」


 影の者は何も言わない。だがそこにいるだけで、圧倒的な存在感がある。


 ここにきて、四天王が二人同時。

 勝てるのか、それとも逃げることはできるのか。

 内心で冷や汗をかきまくり、どう動くかを必死に考える。


 だがラザルは、敵である俺を前にしているというのに穏やかな笑みを浮かべていた。


「本当はね」


 ラザルが言う。


「ヴァルゼインとの戦いで弱った君を、そのまま倒す予定だったんだ」


 軽い口調。

 だが、その目は笑っていない。


「でも、影の者がね」


 ラザルは隣を見る。


「回復まで待つ、って言って聞かなくてさ」


 そう言われ、そいつはゆっくりと一歩前に出る。


 黒い。

 輪郭すら曖昧な、闇の塊。


「……特殊条件」


 低い声。


「というものが、この世にはある」


 俺の背筋に、冷たいものが走る。


「条件を満たせば、スキルやステータスを得られ、莫大な力を得ることができる」


 ...俺が『覚醒』や『英雄』を手に入れたようなやつか。


「私は、影を使い世界の裏側を覗くことで、その条件を知った」


 影の者は続ける。


「一つは――万全の勇者を倒すこと。だから貴様が回復するまで待っていた。」


 闇が、揺れる。


「そしてもう一つは――」


 その瞬間。

 闇が、動いた。


 速すぎて、見えなかった。

 気づいた時には――


 ラザルの胸から、黒い槍のようなものが突き出ていた。


「……え?」


 ラザルの口から、血がこぼれる。


「影の……者……?」


 影の者は、感情のない声で言った。


「四天王を、この手にかけること」


 闇が、さらに深く突き刺さる。


「仲間を討ち、勇者を倒す」


 仲間を刺したというのに、平然と話を続ける。


「その条件を満たした時、私は『高みを目指す者』となり力を得る。その力を使い魔王を始末し、私が新たな王となる。」

「か、影の…者…なにを…言って…」


 さらに闇が襲いかかり、ラザルの胴に穴があく。


 ラザルの体が、崩れ落ちた。

 床に血が広がる。

 影の者は、俺を見る。


「次は、お前だ」


 圧。

 息が詰まる。


 闇が、膨れ上がる。


「条件を満たすため」


 一歩一歩、近づいてくる。


「勇者、お前を殺す」


 逃げ場はない。


 ここで。


 最後の四天王との、決着がつく。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ