表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚されたけど、勇者の結末はロクでもないのが相場なので疑ってかかってます~やだこの勇者全然言うことを聞いてくれない~  作者: ターシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/62

24 勇者は、四天王と戦う


 ヴァルゼインがただ前に出るだけで、空気が押し潰されるような圧がある。

 そこから振るわれる強力な一撃。

 正面から受け止めるも、とんでもない重さだ。


「どうした、勇者。動きが鈍いぞ」


 余裕を含んだ声。だがその足運びは無駄がなく、間合いに踏み込む一歩一歩が的確だった。

 まともに受けないように剣を受け流しながら、わずかに眉をひそめる。


(強い。でも――)


 魔力の流れが、見える。

 いや、見えすぎる。


(綺麗すぎるんだよ、この人)


 無駄がない。淀みがない。洗練されすぎている。

 だからこそ、俺は小さく魔力を差し込んだ。


 すると一瞬。

 ヴァルゼインの剣の軌道が、ほんの指一本分だけずれた。


「……?」


 剣が空を切る。

 俺は即座に距離を取った。


(やっぱり点でなら効く。)


 スキル『魔力干渉』

 相手の魔力に干渉して邪魔をするスキル。


 完全に打ち消すのは相当な実力差が必要となる。だが相手の魔力の流れが綺麗ならば、ほんの一瞬妨害する程度ならできる。


 斬撃の瞬間、踏み込みの直前、魔法を組み上げる刹那。

 ほんの一拍、魔力の流れを乱すだけでいい。


「小癪な真似を……!」


 ヴァルゼインの声に、初めて苛立ちが混じった。

 そして次の瞬間、その魔力が膨れ上がる。


「魔力に干渉しているのか。ならば邪魔をされるなら――」


 地面が鳴る。

 魔力の奔流が、全身を包み込んだ。


「邪魔されても関係ないほど、力を込めればいい」


 踏み込み。

 今度は、干渉が追いつかない。


(脳筋かよ!?)


 内心で突っ込みながら、必死にかわす。

 速度も威力も先程とは段違いだ。小手先の妨害など、誤差にすらならない。

 脳筋ではあるが、確かに有効ではあった。


 かわして、受け流している内に段々と俺の魔力が減ってくる。やつも身体強化で相当な魔力を使っているはずだが、まだ余裕はありそうだ。


「どうした! もう限界か!」


 ヴァルゼインが笑いながらそう言う。

 たしかにやつから見たら俺の魔力は減っていき、動きも少しずつ鈍くなっているだろう。


 だが――。


(限界? 違う)


 俺は足元に、そっと魔力を流し続けていた。

 地面へ。石へ。見えないほど少しずつ。


(最初から正面戦闘で全部使うつもりなんてない)


 ヴァルゼインが気づいたときには、遅かった。


「……待て。地面に、魔力を?」


 俺は剣を構えたまま、静かに息を吸う。


「土魔法。応用だけどね」


 次の瞬間、大地がうねった。


 地面が割れ、土砂が奔流となって四天王へ襲いかかる。

 無数の石礫が、嵐のように舞い上がった。


「小賢しい!」


 ヴァルゼインは吠え、突進する。

 拳で石を砕き、剣で土砂に穴を開け、力だけで押し通る。


 だがそのたびに、魔力が削られていく。


(効いてる……でも、倒せない)


 互いに消耗し、息が荒くなる。

 そのときだった。


 周囲から、ざわりとした気配が押し寄せる。

 魔物の群れだ。それも、使役魔物ではない。

 自然魔物が、この戦闘に引き寄せられている。


「……チッ」


 四天王が舌打ちする。


「邪魔が入るな。今回はここまでだ。」


 剣を下ろし、俺を睨む。


「覚えておけ、勇者。俺と互角の程度では魔王様はおろか――」


 ヴァルゼインは一瞬笑って、言葉を続ける。


「影の者にすら勝てん」

「影の者?」


 なんだそれは。厨二のアダ名か?


「『絶望』を司る、四天王最強だ。単純な武では俺が上だが……魔法や能力を含めた実戦では、俺より遥かに強い」


 出たよ四天王最強。じゃあまさかこいつは四天王最弱なのか?

 だとしたらちょっと計算が狂うな...この強さで最弱だとしたら...


「貴様の小細工も、影の者の前では果たしてどうかな?見ものだな。」


 そう言い残し、四天王は闇に溶けるように去っていった。


 俺は大きく息を吐く。


(……引き分け、か)


 魔物の気配を感じながら、剣を鞘に収めた。


(次は、もっと厄介そうだな)


 夜の魔族領に、静寂が戻っていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ