第2話 勇者は、素直にスキルを取らない
その後いろいろと話を聞いた後、まずはスキルを取る流れになった。
「では勇者様。こちらが勇者様の取得可能なスキル一覧です」
そう言って神官が差し出してきたのは、例の半透明の板だった。
ずらりと並ぶ文字列に、思わず目を細める。
「……多いですね」
「はい。勇者様は《異世界人》《勇者》、二つの称号をお持ちですので」
神官は誇らしげに頷く。
「通常よりも遥かに多くのスキルポイントが付与されています」
(つまり、短期間で強化して使い切る前提、と)
俺は内心でそう結論づけた。
横から大臣が口を挟む。
「ご安心ください。すでに、最適な構成は用意しております」
「最適?」
「はい。歴代勇者の記録をもとに、魔王討伐に最も効率的なスキル構成です」
神官が板を操作すると、いくつかのスキルが強調表示された。
「《勇者剣術》《聖剣適性》《聖属性魔法》《勇者のカリスマ》……」
「仲間への補助系も充実しております。堅実で確実ですぞ」
それらのスキル群を見て、俺は頷きかけてやめた。
ここで同意したら終わる気がしたからだ。
いや、正確には――
「国が提案してくる構成」という時点で、勇者を管理しやすくするための型なんじゃないか、という疑念が拭えなかった。
「……なるほど」
とりあえず、曖昧な相槌で時間を稼ぐ。
「確かに、効率は良さそうですね」
「では!」
大臣が身を乗り出す。
「この構成で進めていただければ――」
「ただ」
俺は、被せるように言った。
一瞬、部屋の空気が止まる。
「一つ、懸念があります」
「懸念、ですか?」
神官が不安そうな顔をする。
「はい。魔王軍側に、動きを悟られる可能性についてです」
「……と、言いますと?」
俺は、頭の中で用意していた“それっぽい理屈”を口にする。
「歴代勇者の戦い方やスキル構成が、魔王軍に記録として残っている可能性はありませんか?」
そばにいた大臣が、はっとしたように目を見開いた。
「確かに……過去の魔王軍は、勇者を幾度も相手取っておりますな」
「ですよね」
俺は頷いた。
「同じ構成、同じ戦術でいけば、対策されている危険がある」
「……なるほど」
大臣が腕を組む。
「しかし聖剣がありますぞ。勇者様であれば、聖剣を使えば必ず――」
「聖剣も、同じです」
即答した。
「え?」
「聖剣に頼りきりになるのは、危険だと思います」
「それは……なぜでしょう?」
俺は少しだけ言葉を選ぶ。
「もし聖剣を失ったら。その瞬間、戦力が激減します」
「……!」
「それに、魔王軍が“聖剣対策”をしている可能性も否定できません」
大臣が深く頷いた。
「聖剣を使ってくると見越して罠をはるということも……あり得ますな」
(よし、食いついた)
俺は内心でガッツポーズした。
「さらに言えば」
少し間を置いてから、続ける。
「国の指示通りに動きすぎるのも、どうかと」
「……と、申しますと?」
「万が一、失敗した場合」
俺は静かに言った。
「『国がそう言ったから』では、国に責任を押し付ける形になってしまう」
部屋が、静まり返った。
数秒後、大臣が口を開く。
「……勇者様は、我が国の責任まで考えてくださっている、と」
「ええ。まあ」
(いや、俺が自由に動きたいだけだけどね)
「なんと……」
神官が感動したように目を潤ませる。
「力を持つ者が、発言権を独占するのは国家として不健全……その通りです……!」
(いやそんなこと一言も言ってないけど?どこから来たんだそんな話)
それを聞いていた王様は、満足そうに頷いた。
「勇者様のお考え、よく分かりました」
俺は、ここが正念場だと思った。
「……ですので」
一拍置いてから、言う。
「可能な限り、単独で行動したいと考えています」
沈黙。
まずったか...?今度こそ拘束か?
「……単独行動」
大臣が繰り返す。
「魔王軍に悟られぬための、独自行動……ですな」
「そういうことになります」
「なるほど……確かに理にかなっている」
(通った……!?)
「勇者様の裁量に、お任せしましょう」
王様の一言で、全てが決まった。
「ありがとうございます」
俺は深く頭を下げた。
(助かった……)
その直後、再びステータスウィンドウが開く。
【スキル取得が可能です】
一覧を眺めながら、俺は一つのスキルに目を留めた。
(……これだな)
《気配遮断》
俺は、迷わずこれを取ることにした。
(まずは、生き残るところからだ)
わかりにくいですが大臣、神官、王様、主人公がいます。
まぁ大臣と神官どっちが喋ってるかとかは気にしないでください。
今日中に7話まで投稿します。




