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勇者召喚されたけど、勇者の結末はロクでもないのが相場なので疑ってかかってます~やだこの勇者全然言うことを聞いてくれない~  作者: ターシ


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18 勇者は、精神干渉が効かない


 夜の街は、昼とはまるで別の顔をしていた。

 灯りは最小限に抑えられ、人通りはほとんどない。店の窓も固く閉ざされ、遠くで犬が吠える音だけがやけに響く。


(……なるほど。これは確かに、普通の見回りじゃ手が出せないな)


 フードを深く被り、俺は屋根の影を選ぶように歩く。

 勇者だと悟られないため、剣も布で包んだままだ。


 そのとき――。


 路地裏の奥で、何か音がした。


 反射的に足を止め、気配を探る。

 いる。……一人だけだ。


「……あ?」


 現れたのは、街人だった。

 行商人だろうか。荷物袋を背負ったまま、ふらふらとこちらに歩いてくる。


 だが――おかしい。


 足取りは覚束ない。焦点の合わない目。生気のない表情。


「……止まれ」


 声をかけても、反応はない。

 次の瞬間、その街人は短剣を抜き、こちらに突っ込んできた。


(操られてる……!)


 こちらが剣を抜く選択肢はない。

 一般人だ。斬れるわけがない。


 俺は地面を蹴り、横に跳ぶ。

 《無音行動》を意識し、距離を取る


 だが――その瞬間だった。


『――逃げるな』


 頭の中に、直接声が響いた。


 ぞわり、と背筋が冷える。

 視界が歪み、心臓が一瞬だけ強く脈打った。


(今のは……)


 だが、次の瞬間には、何事もなかったかのように感覚が戻る。


(……効いてない?)


 いや、違う。

 弾いたんだ。


 意識の端で、スキルが発動した感覚があった。


《状態異常耐性》

《精神干渉耐性》


(……取っておいて正解だったな)


 背後で、操られた街人が呻き声を上げる。

 再び向かってくる気配。


 俺は屋根へと跳び、視界を完全に切った。


(問題は……どこからだ)


 精神干渉は、確実に“誰か”が使っている。

 だが姿は見えない。


(索敵だけじゃ足りない……)


 ステータス画面を開き、スキル一覧から迷いなく選択する。


《魔力探知》――取得。


 次の瞬間、世界が変わった。


 街に漂う魔力の流れ。

 人々にまとわりつく、不自然な“糸”。


 そしてそれらは途中で一本にまとまり、はっきりと上へ伸びていってる。


(……あそこか)


 視線の先。

 街の中央にそびえる、高い塔。


 俺は屋根伝いに移動し、距離を詰める。


 塔の上には、一人の影があった。


 人型。

 だが、肌の色は人とは違い、目は赤く光っている。


「ほう……精神干渉が効かんとは」


 魔族だ。

 そいつは愉快そうに笑った。


「行商人を操り荷物に紛れて街に入り、夜のうちに掌握する。完璧な計画だったのだがな」


 操られた街人を見下ろしながら、続ける。


「街を一つ支配すれば、俺の評価も跳ね上がる。一気に四天王候補だ!」


(……あ、やっぱり四天王いるんだ)


 妙なところで冷静になってしまう。


「だがキサマ……まさか召喚されたと噂の勇者か。面倒なところに首を突っ込んでくれたものだ」


 魔族がこちらを見る。


「お前が来なければ、この街は明日の朝には――」

「それ以上は聞かなくていい」


 俺は剣に手をかけた。


「街を使って出世しようとか、性格悪すぎだろ」


 魔族が目を細める。


「勇者のくせに単独行動……仲間も連れずに一人で来るとは、随分と自信があるようだな」

「自信っていうか」


 俺は一歩、前に出る。


「操られた人を斬らずに済むなら、その方がいい」


 というかそもそも仲間いないし。衛兵たちは仲間と歯また別だろう。

 一瞬、魔族の表情が歪んだ。


「……減らず口を」


 魔力が膨れ上がる。

 精神干渉ではない、純粋な戦闘用の気配。


(……来るか)


 街の上空、塔の頂で――

 勇者と魔族の戦いが、静かに始まろうとしていた。


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