第八十一話 鉄製⁈
シャツが落ちた。
僕が目線を下に1ミリ動かした瞬間
ガチャッ!
ドサッ!
ドアが開き、後ろに転んだ、僕だけ。
その次の瞬間にはシャツは元通りきららさんを覆っていた。
安心と残念な気持ちが同時に押し寄せた。
バタンッ!
ドアは勢いよく閉められた。
その後すぐ、着替えを終えたきららさんが出てきた。
僕は念の為、女子トイレ外で待っていた。
よくよく考えればドアを開けたのはきららさんか。
え?普通に危なくね?
トイレから出てくるなり僕のシャツをバサっとまるでスポーツ選手がタオルをファンにあげるかの如く僕に投げた。
怒っている?そのままスタスタと行ってしまった…
僕は男子トイレで着替えをさっと済ませ体育館に戻った。
体育館までの廊下を歩いていると、なんで僕は怒られているんだろうとふと疑問に思い始めてきた。
そもそも、シャツを持ってきたわけで、それがなければ女子トイレには入らずに済んだはずだし。
なんて考えていると…
「あっお疲れ!」
前から来たのは姫川さん。
「あっお疲れ様です」
「うん!あとは結果だね」
「はい」
なんか、変に会話が途切れてしまった。
気まずい。自分のアドリブ力のなさにうんざり。
「指揮者…」
「舞台で…」
少し間があいた後、同時にまた話してしまった。
僕はこれをよくやってしまう。
「あ、どうぞ、どうぞ」
「前にもこんなことあったね。舞台でなんか転んでなかった?大丈夫?」
「あ、転んでましたね。ハハッ!大丈夫です。膝は鉄製なので」
「鉄製⁈めっちゃ硬いじゃん!でも大丈夫なら良かった!梵くんはなに言おうとしてたの?」
「僕は全然大したことじゃないんで」
「そっか。じゃあ、またあとでね」
「はい、また」
ふわーと姫川さんは行ってしまった。もう少し合唱の感想を言い合いたかったのに。
それに指揮者が良かったことを伝えたかったけど、転んでいたのを見られていたことが恥ずかしくなってそれどころじゃなくなってしまった。情けない…。
「シッシッシ!」
体育館の付近付近から
笑い声?みたいな音が聞こえた。
あたりを見て渡してみると…
物陰に隠れていた母さんと冬ちゃんを発見した。
いつからいたのかは、わからないがそのままスルーしたい。
「なに」
「別にぃーーー」
なんかめんどくさい予感しかしない。
ふゆがコソコソとお母さんに話している。
大体なんて言っているか想像つくけど。
「じゃあ、お母さんたち帰るからあとで結果聞かせてね!」
「あい」
このあと、席に戻ると2年生の合唱は始まっていて、やっぱりたった1年とはいえ迫力や音の幅が全然違った。
それに男と女の声の変化も相まりより合唱って感じがした。
順調に合唱コンクールは進行し、結果発表の時間となった。
会場には1.2年生が結果を待ち望む。
あとは結果発表だけだから、席順は結構むちゃくちゃだ。
僕は同じところに座っているが周りは騒がしい。ちなみに瀬川さんの周りにゆっちゃんやきららさんらが集まっているといった感じだ。
結果発表が始まるまで緊張と暗いからか、生徒たちのざわつきが大きい。
意外とこういう時間が一番楽しかったりする。
小学校の時の学芸会とかで舞台裏で真っ暗の中、出番を待っている時が妙に楽しいんだよな。
ザワザワザワザワ…
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
年末年始バタバタで間が空いてしまってすみません…
今後もよろしくお願いします。




