第七十五話 僕が知っている「あーん」じゃない…
ちょうど頭で考えてたことだって思った時…
「普通にってひど〜い」
となりの席からヤジが飛んできた。
意外にもそれは瀬川さんからだった。
瀬川さんはなんか、おとなしめというか静かなタイプだと思っていたから意外だった。
「いや別に普通って意味の普通じゃないから…」
「じゃあどんな普通なの?」
「それは一般的に?みたいな」
「?」
「もういいじゃん。美味しかったの!つまり!」
平井が必死に弁明していた。
よかった自分じゃなくて…
まあ、外から見たら痴話喧嘩みたいな感じだったけどね。
ん?つまりそういうことなのか?
「じーーー」
「ん?なにかな?」
きららさんがこちらを見ている。
嫌な予感がする…。
「あーん。でもしてあげよっか?」
「ん?なんの話ですか?」
「さっきのご褒美に」
「ご褒美?」
「指揮者」
「指揮者?」
「ほら、口開けて目閉じて」
言われるままに僕は従ってしまった…
雰囲気で?
僕は体の向きを90°回転させきららさんの方を向け、目を閉じ口を開けた。
目を閉じた途端逆に周りからの視線が気になり始め、熱くなった。
あれ…?なんか長いな。
ガプッ!
口にスプーンが突っ込まれた。
なんかガサツな感じというか、僕が知っている「あーん」じゃない…
目を開けるとスプーンを握っていたのは入間先輩だった。
すごい顔で僕を睨みつけていたので僕はそっと目を閉じてスプーンを咥えたまま正面に直った。
横できららさんたちが笑っているのがまたもや思い浮かぶ。
おかしいと思った。こんなただの「あーん」なんてご褒美があるはずなんてないのだから。
僕たちはオムライスを食べ、コスプレ喫茶を後にした。
割と満足そうな平井とは対照に僕はひどく疲れてしまった。
少し早いけど、僕は合唱コンクールの行われる体育館で待機することにした。
体育館
まだ、席には数人ほどしか一年生は来ていない。
集合時間よりも1時間ほど早いから、こんなものだろう。
体育館では何やら舞台の機材チェック?的なことが行われていた。
それを眺めながら、ぼんやりしていると
あったかいからか眠くなってきて、うとうとしてきた。
「あーあーマイクテスト、マイクテスト…」
マイクテストの音で僕は目覚めた。
時間を見る限りまだ30分くらいは集合時間まであるみたいだ。
もう少し寝ようかなと思っていると、右前に姫川さんらしき人を発見。
いや、あれはそうだ。
鼓動が突如として激しく動き始める。
僕の中で葛藤が生まれた。
話しかけに行くorこのまま寝る
姫川さんは一人ということは二人きりで話せるチャンスなのだ。
しかし、わざわざ話しかけに行くなんて、しかも彼氏もいるみたいだし周りからやばい奴認定されるんじゃないか。
迷っている間が一番ドキドキする。
社会科見学の時の業者さんの説明で質問するかしないかと迷っている時と同じくらいだ。
そうこうしているうちにD組の生徒たちがきて姫川さんを取り囲んでしまった。
仕方ないと僕は諦めた。
結局のところ何もしない理由を探していただけなのかもしれないと少しナイーブな気持ちになった。
集合時間
生徒たちのお喋りで会場はざわついている。
みんな日本語を話しているはずだけど、なぜか聞き取れない現象が起こっていた。
よくある話だけど
こういう時、自分の名前だけは聞き取れるっというけど、確かに異常に自分の名前は聞こえる気がする。
まあ、全く聞こえてこないんだけどね。
「ただいまより1年生による合唱コンクールを開始します。1年A組の生徒は生徒待機場所へ集合してください。」
会場アナウンスがなった。
いよいよ、合唱コンクール本番開始だ…。
つづく
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