第五十九話 この時このタイミングしかないと思った…。
「姫川さんにとって僕は友達ですか?」
「え?どうゆうこと?それは…」
少し困惑した姫川さんが言葉を言い切る前に僕は再び問いかけた。
「僕はただの友達ですか?」
「梵くん?どうしたの?急に」
「僕は姫川さんのことが好きです。」
「・・・・・。」
勢いで言ってしまった。どこから僕の歯止めが効かなくなったのかわからない。
この時このタイミングしかないと思った…。
「……。」
困惑した姫川さんは沈黙のままだ。
僕の心臓はありえないくらい脈を打っている。
部活の公式戦の比じゃないくらいに。
沈黙はあまりにも長く感じた。
その間で聞こえる全ての雑音がいつも以上にうるさく感じた。
「…ありがとう」
口を開いた姫川さんからは聞こえたのはありがとうだった。
これがどういう意味を指しているのか全くわからなかった。
「…ごめん、後で連絡するね…。じゃ」
「……。」
そう言って彼女は公園から小走りで去っていった。
僕は声を発することができなかった。
この一連の流れが何を意味するのか僕にはわからない。
ただ、これであっていたのか、このタイミングでよかったのか、それだけが心に突き刺さったままだ。
あれほど、今だと感じていた勘もそっぽを向いている。
さっきまで熱かった体はすっかり冷え切っていた。
まだ、結論は聞いていないのにも関わらず。
家に帰るまで周りの生活音、環境音は一切耳に入らなかった。
ただ、今日の一連の流れを無限に脳内再生しながら白線の上を歩き続けた。
ガッチャン!
「・・・・・・。」
「あれ?おかえり?」
お母さんの声は音として聞こえてはいたけど言葉として認識することができなかった。
「どうしたんだろ?」
荷物を置きすぐさま浴室へと向かった。
無気力のまま体・頭と洗い、浴槽に入った。
ドボンッ!
ブクブクブクブクブクブク!
僕は目の下まで浸かり、空気で泡立てていた。
公園のベンチでの会話が頭から離れない。
一言一言、自分の言ったことを採点するように思い出していた。
そしてその度に姫川の表情がどうだったか気になった。
さっきは緊張のせいでしっかり顔を見れていなかったから、不安が増すばかりだ。
思考停止するまで考え込むと、なぜか、学校で流れていた合唱コンクールの曲が脳内で再生し出した。
今は深く考えない方が楽かもしれない。不思議と合唱の曲を思い出すとそんな風に思った。
多分、都合のいい歌詞を自分に重ねているだけなんだと思う。でもそれでもよかった。
僕は浴槽で勢いよく立ち上がった。
浴槽内のお湯が大きく水飛沫を上げた。
その後、風呂から出た僕はそのままリビングへ行き食卓を囲っていた。
「さっきからどしたん?なんか変だけど?」
「あきが変!」
お母さんと冬が僕の異変を察知したらしい。
いや冬は違うか。
当然僕はありのままを話すわけにはいかない。
「いや、ちょっと疲れただけ」
「そう、じゃ、たくさん食べないとね」
「冬もたくさん食べるよ!」
僕は春巻きを口いっぱいに頬張った。
合間合間に白米を挟み手は絶えず口に食べ物を運び続けた。
噛み疲れたのか一度箸が止まった。
それと同時に…
ピロロン!
ラインが鳴った。
一応リビングにスマホを持ってきていたのだが、思ったよりも早く連絡があり焦った。
すぐに画面を確認した。
確認するとただの公式ラインだった。
ドキドキの無駄遣いをした気分だ。
「ごちそうさま」
食事を済ませ、自室に戻った僕はスマホを目の前に座っている。
これからまるでスマホと対峙するかのようだった。
まああながち間違ってはいないが…。
時刻は22時を回った頃、久しぶりの部活の疲れで若干うとうとしていた時だった。
ピロロン!
携帯が鳴った。
僕は目を細め通知の名前の部分だけを確認した。
姫川の文字を確認した。
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。




