第五十八話 この笑顔に僕は…。
あ、何を話せばいいかわからない。
沈黙を恐れた僕はとっさに話を繋げた。
「移動教室楽しかったですね。」
「そうだね!何が一番楽しかった?」
「自分は農業体験です。大変だったけど。姫川さんは?」
「農業体験確かに楽しかったね!貴重な経験だし。うちは、キャンプファイヤーかな」
ん?キャンプファイヤー?フォークダンスってこと?
「確かに綺麗でしたよね」
「あ、梵くんは誰と踊ったの?フォークダンス」
そう言って顔を覗き込んできた。
「え、あ、A組の人と瀬川さんとかです。」
「あれ緊張するよね、普通に。でも楽しかったな〜」
今の方が遥かに緊張する‼︎うまく目を合わせられなかった。
「そういえば梵くん最後隣だったね!」
「あ、そうかもです。」
隣にいたのバレてんじゃん!
緊張のせいで単純に返してしまう会話が弾まない。
必死に考えているんだけど…。
「あ、そろそろうち曲がるわ。梵くんはどっち?」
「あ、自分は…」
気づいたら、家の方向とは全然違うところへ来ていた。
どうしよ。
「そこの公園でもう少し話しませんか?」
「話?」
「ちょっと聞きたいことあって…。」
どうやって帰るかを考えてたはずなんだけど…
勢いで提案してしまった。
後はどうにでもなれって感じだ。
「いいよ!てか話ってなになに?」
「それは公園ついてからで」
しらを切った。
話って言ったけど何を聞きたいのか全く考えていなかった。
公園に着いた。
この公園はブランコと滑り台とベンチくらいしかない小さな公園だった。
僕たちは小さなベンチに腰をかけた。
「もう10月だとこの時間でも真っ暗だね〜」
「はい、急に日が沈むの早くなった気がします。」
「なんか、二人でゆっくり話すの久しぶりじゃない?」
「そうでしたっけ?」
「そうだよ。なんか梵くんいつもバタバタですぐどっか飛んでいっちゃうから」
「ハハハッ。ここ最近はなんかそんな感じでしたね。ごめんなさい。」
「気にしないで、てか人気者じゃん」
「そんなんじゃないですよ」
そう言って僕は姫川さんの顔を見た。
その時の顔はなんだか初めて会った時の顔と同じように感じた。
なんか僕を見て微笑んでいるような、温かい表情だ。
そうだ。この笑顔に僕は…。
目があっていたがすぐに僕は視線を逸らした。
急に顔というか体が熱くなって手で顔を仰いだ。
「暑いの?今日結構寒くない?」
「僕暑がりで」
「暑がりすぎでしょ?梵くんは冬でも短パン半袖小僧だったでしょ?」
「ハハハッ!なんですか小僧って。まあ間違ってないですけど」
なんならタンクトップ小僧だったけどね。
「やっぱり!クラスに2、3人はいるよね」
「やめてください。そのレアキャラ扱いみたいなの」
「ハハハ!ごめんごめん」
話が沸いた後、少しの沈黙が生まれた。
雪でも降ってくれれば、あ、雪だってなるのに。
まだ10月だもんな。
「ね、好きな人とかいないの?」
「え、なんですかいきなり」
「いやーなんとなく」
唐突な質問に僕はさらに熱く舞い上がった。
また、熱くなってきた。
「姫川さんはどうなんですか?」
「え⁉︎うち?うーんどうなんだろう。運動できる人とか?わかんないけど」
「そう…なんですね」
可能性の話だが期待が込み上がる。
「で、梵くんは?」
「優しい笑顔の人…ですかね。」
「へーでも優しい笑顔か〜。どんなだろ?ゆかちとか?」
「なんでそうなるんですか!」
「だっていつも一緒にいるじゃん」
「それはまあ僕友達少ないんで…。」
「そう?全然そうは見えないけど」
僕の思考を超えて行動が再び先行した。
「姫川さんにとって僕は友達ですか?」
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。




