第五十七話 予想外のことが起こるのはやっぱり良くない。
部活動 終了後
いつものように部活を終えて着替えていた。
着替えは外の非常階段を使用するので今はまだいいが、冬は凍えながらすることになるとふと思った。
「誰か一年、倉庫の鍵職員室に戻しておいて。ここおいていくわ」
誰も自らやろうとするものはいない。
男というのはそういうものだと思う。
特に見せ場がないと、率先して良いことをやろうとしない。
渋々、僕は鍵を手に取り職員室に向かうことにした。
こういう時になぜか良心が働いてしまう。
というかやらないことへの罪悪感が嫌なだけの可能性もあるし、誰もやらずに顧問に怒られるのはごめんだ。
暗くなった校舎にはもう生徒はほとんど残っておらず、非常灯の灯りが怖さを引き立てていた。
怖さとワクワクが混在しているような不思議な気持ちになった。
職員室はまだ先生方が働いているので電気がついている。なんか安心した。
ガラガラガラ
「失礼します。野球部の鍵を返しにきました。」
チラッとひと足先に戻った野球部の顧問が僕の方を見た。
それだけだったけど、怒られるのではないかと心臓に悪い。
鍵を所定の位置にかけて職員室を後にした。
「失礼しました。」
ガラガラガラ
裏口から帰るのは久しぶりだ。
校舎の裏口へ向かうのだけど、1人だとどうにも怖くて駆け足になる。
ふとこんな時に先輩から聞いた話を思い出してしまった。
昔、この学校で心霊現象が起こるか確かめようとして学校に泊まった子の話を。
先輩曰く話はこうだ。
「当時はこっくりさんが流行っていて、TV番組でも取り上げられたりしたらしい。生徒の中でも休み時間にやっていたりと割と遊び半分だったとのこと。でもある好奇心旺盛の子が夜誰もいないところでやらないと意味がない的なことを言い出して他の友達もそれに賛同したらしい。グループは4人でA、B、Cとうち一人は女の子(D子とする)で唯一乗り気ではなかったらしい。こっくりさんはざっくり言うと日本では通常、狐の霊を呼び出す行為(降霊術)と信じらている。机の上に「はい、いいえ、鳥居、男、女、0〜9までの数字、五十音表」を記入した紙を置き、その紙の上に硬貨を置いて参加者全員の人差し指を添えていく。全員が力を抜いて『コックリさん、コックリさん、おいでください。』と呼びかけると硬貨が勝手に動き答えを示すと言うものだ。夜学校に忍び込んだ4人は警備員に見つからないようにするため懐中電灯すらも消灯し行動していた。自分たちの教室に着いた後すぐにこっくりさんの儀式に取りかかった。はじめは非日常的な体験からD子も含めワクワクしていた。手順通りに進めた。しかし、物事は噂とは異なり全く硬貨が動くことはなかった。もうやめて帰れろうとした時に硬貨が動き始めたのだ。に⇨げ⇨る⇨な、の順番で硬貨は動いた。誰か動かしたかとAが聞いた。しかし誰も動かしていないという。怖くなった4人は廊下を走って侵入してきた経路から戻った。その時D子だけが少し足が遅かったため少し遅れて到着した。後日普通に登校してきた4人だがD子は置いていったことを怒っていたのかあれ以来ABCと口を聞かなかったという。これはD子が卒業式の日にABCに話したらしいがこっくりさんで動かしたのはD子だったという。ただ、早く帰りたかったから、に・げ・ろ、とやったつもりだったと言う。つまりD子の操作とは別に、に・げ・る・な、と結果的になりそれが怖くてABCと距離を取ったという。幸いあれ以来何も起きていないらしい」
D子だけがその真実を抱えていたと思うと確かに怖いな。
なぜか、こう言う時に限って怖い話を深く考察してしまう。
こっくりさんを正しい方法で終了しなかったこととか、D子は実は何か見たんじゃないかとか色々考えたりした。
裏口の玄関付近に着くと、誰かの後ろ姿があった。
真っ暗だったので誰かはわからなかったが服装と髪型的に女性であることはわかる。
怖い想像をしていたからか、心臓がドキドキしてきた。
早足はいつの間にかすり足になり気配を消しながら僕は進んだ。
ドクンドクン。
早くどっか言ってくれないかなと思っていたら、急に振り向いた。
「D子⁉︎⁉︎⁉︎」
「あれ、梵くん?」
神経を研ぎ澄ませていたぶん僕は大きくビクッとしてしまった。
「……姫川さ、ん⁈」
「うん、そうだよ!D子?」
「あ、いやなんでもないです」
「変なの。フフフッ。もう帰り?」
安堵と共に別の緊張が湧いてきた。
予想外のことが起こるのはやっぱり良くない。
「はい」
「うちも、もう帰り!ちょっと待っててよ。すぐ戻るから」
「わかりました。」
なんか色んな意味で姫川さんと距離ができた気がしていたのでつい、さきちゃではなく苗字で呼んでしまった。
でもやっぱりこの方がしっくりくる。
というか一緒に帰るってこと?
裏口の玄関でソワソワしながら僕は待っていた。
「お待たせ!帰ろ!」
玄関を出たところだが、よくよく考えたら方向的に50mくらいしか帰ることができないことに気づいた。
その50mでどうするべきか僕は考えていたのだが…
すぐにその分岐点はやってきた。
「梵くんこっちだよね?確か」
「あーいや、今日はこっちです。」
「そうなの?前あっちじゃなかった?」
「逆からでもいけます」
「逆から?それ帰れるの?」
「はい、どっちでもいけます」
「まあいいや。じゃあまだ話せるね」
僕は適当なことを言って姫川さんと帰ることを選んだ。
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
だいぶ怪談話が長くなってしまいました。
今後もよろしくお願いします。




