第五十四話 人混みを駆け抜ける、思いのままに。
♪〜〜
今日がまた流れ始めた。
⁉︎⁉︎
「曲が一周するまでにペアを見つけてください。」
⁉︎⁉︎
先生が衝撃的な発言をした。
最後の最後で誰でもいいのか。まじか。
希望に満ちた?のか?
生徒がまるで大群の魚のように目まぐるしく動き回る。
120人いるんだ。それはそうだ。
僕は必死にさきちゃを探した。
曲が終盤になるにつれて、希望は焦りへと変わっていく。
僕は足を止めた。
なんとなく、一点の方向を見つめた。
なぜかわかった。奥にさきちゃいる。僕はそこを目掛けて走る。
曲がもうじき終わる。
同性同士で組むペアや、意外なペアが生まれていたのにも目もくれずに人混みを駆け抜ける、思いのままに。
曲が一周した。
僕の目の前にはさきちゃいた。
そう目の前。それは僕の隣のペアとしてだった。
この際相手なんかどうでもいいでも、本当はそこにいるのは僕のはずだったとそう思った。
悔しかった。
「うちでごめん」
「え?」
僕は最終的にペアが見つからなくて近くにいたゆっちゃんと組んだ。
嫌なんて気持ちは全くない、けど…。
「そんなことないよ」
「うん」
僕は嘘をつくのが下手らしい。多分、ひどい顔をしていたのかも。
勝手にガッカリするのは失礼すぎる。それも大切な友達に…。
ゆっちゃんのテンションは明らかに低かった。
傷つけてしまったかもしれない。
僕の身勝手な感情の浮き沈みに彼女を巻き込んでしまった。
楽しい時間を奪ってしまった。
僕たちは無言でフォークダンスを終えた。
フォークダンスの余韻で広間に残って話す人もいた。
さきちゃと踊れなかったことと、ゆっちゃんを安易に傷つけてしまった罪悪感で落ち込んでいた。
何かしてないと落ち着かないから、そのテンションでキャンプファイヤーの片付けを手伝っていた。
さっきまでの高揚感は消えさり、消火された炭のように意気消沈していた。
ある程度片付けが終わった。
炭で手や顔が汚れてしまったので食器を洗った場所で汚れを流していた。
「冷たッ!!」
首元に冷たいものが触れた。
「何うかない顔してんの?梵少年」
「なんだ、きららさんか」
首に水を垂らしてきたのはきららさんだった。
「なんだとはなんだ。さてはさっきのフォークダンスで好きな人と踊れなかったとか?」
「うるさいですよ、今は気分良くないんで…。」
「ウッソ。本当にそうだったの?」
「……違います。」
「まあ、別に振られたわけじゃないし、It's not a big deal.だよ」
「だから、違います。それに英語わかりません。」
「まだ何も始まってないってことだよ」
「…。」
不甲斐なくきららさんの言葉で少し気が軽くなった自分がいた。
「ありがとう…」
浅いため息を吐いた後、彼女は答えた。
「…容易い御用ですぞ」
なんだかんだこの子は優しくて大人なのかもしれない。
時々救われている自分が情けない。
「今のきららさんは大人きららさんなんですね」
「?君は何を言っているんだい?」
「いえ、なんでもないです。」
「?そろそろ戻ろ。片付けも終わりそうだし」
部屋に戻った。
すっかり寝静まり静寂に包まれている。
気持ちは昨日とは違う。
グチャグチャなままの僕の心を誰かに綺麗に整理してほしい…
そんなことを考えながら青白い天井を僕は眺めている…。
こうして移動教室2日目の夜が終わった…。
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。




