第五十話 ただ僕の好奇心が先行した。
宿舎前の大きな広間。
普段は屋外BBQ施設として使われているのだろう。
早速、班ごとに分かれて席に座った。
先生がざっと作り方をみんなに説明していく。
一応しおりにも手書きのイラストとともに説明があった。
「このイラストうまくない?誰が描いたんだろう?」
「確かに、表紙もうまいし。」
漫画調のイラストがしおりにところどころ描かれていた。
僕ときららさんが先生の説明中に絵の感想を言っていると…。
「それ、うちらの班の田中さんが描いたんだよ」
後ろからこそっと瀬川さんが教えてくれた。
瀬川さんはなんでも知っている。
「そうなの⁉︎すご!」
多分田中さんは恥ずかしいから自分から言わないんだろうな。
「ねえねえ!田中っち、この絵うまいね!今度教えてよ!」
「え、あ、はい。ありがとうございます。」
きららさんは猪突猛進。
だけど田中さんの表情は少し嬉しそうに見えた。
乗っかるように僕も言った。
「うまいです!僕も教えて欲しいくらいです…。」
「あきは絵描かないだろ。」
「描くよ。小学校の時漫画とか描いてたし」
「何それウケる。絶対自分が最強なやつだ!」
「うるさい。」
「図星だ。」
「ほっとけ」
急な呼び捨てもびっくりしたけど、どうにも過去まで見透かされているらしい。
まあ実際、そんな感じに主人公最強漫画みたいな感じだった気がする。
僕らのやり取りを見て田中さんがクスッと笑っていた。
あんまり先生の話を聞いてなかったわけだが、まずは役割分担といったところ。
班のリーダーである日下部がいい感じに仕切ってくれるのでおんぶに抱っこだ。
「じゃあ、梵ときららさんで野菜を洗ってきてくれる?こっちで肉を切って、ご飯の準備しておくから」
「イェッサー!」
そういってきららさんは敬礼をした。
「ほら早く、梵二等兵もやって」
「へいへい。」
渋々敬礼をした。てか二等兵なんか僕。
洗い場に着くと他の班がすでに野菜を洗い始めていた。
先ほど収穫した、まだ土のついたジャガイモと人参を洗っていく。
「よしジャガイモ終わったー」
「案外簡単ね。」
「まあ洗っただけだし。きららさんこれあっちに持っていってくれる?僕あとやっておくからさ」
「おっけ〜い。死ぬんじゃないぞ梵隊員」
「はいよー」
まだその設定だったのか。
黙々と人参を洗っていく。
「隣使っていい?」
「あ、はい」
僕は少し横にずれた。
「いいの収穫できた?」
「うん、たくさん獲れたと思う。」
僕は人参を洗いながら横を見た。
「さきちゃ?」
「やっほー、なんか今朝会ったのに久しぶりな気がする。」
「僕もです。」
なんか気恥ずかしい雰囲気になってしまった。
次の話題を探さないと…。
「あ、エプロン似合ってますね」
「そう?ありがとう。ママの借りてきたんだけどね」
「普段は料理するんですか?」
「うーん、簡単なやつなら?」
「すごいですね!」
「大したことないよ。それより今日のフォークダンスさ…相手ってどうやって決めるか知ってる?」
「え、相手?多分ランダムなんじゃないですか?わかんないけど。」
僕はフォークダンスの存在を今の今まで忘れていた。
そしてその言葉を彼女の口から聞くとは思っていなかった。
「選べたらよかったのになー。梵くんはもし選べたら誰と踊るの?」
選べたら?それは噂を知って言ってるのか?男子とはやりたくないのか?
わからない…し、星空観察のことを再び思い出した。
そして、ただ僕の好奇心が先行した。
「それってどういう意…」
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
50話まできました。
今後もよろしくお願いします。




