第四十七話 僕はこの時、宇宙に行っていたのだろう。
するとこっちをチラッと見た。目が合った。
ニコッと笑い、そして再び前を向いた。
そこからは管理人さんのお話は頭に入らず、ただ、ぼーっと星の輝きを眺めていた。
僕はこの時、宇宙に行っていたのだろう。
全てのことに答えが出た気がした。
なぜ地球が丸いのか、なぜ太陽が回るのか……。
ツンツン。
またツンツン⁈
「おい、いつまで見てんだいくぞ」
「あ、あーなんだ渡辺か」
話しかけてきたのは渡辺だった。それに勝手に落胆した。
「なーにぼーっとしてんだ?宇宙の果てでも見えたか?」
「うん、多分見えた。」
「俺よりバカになったか?」
「そうかも」
「ダメだこりゃ」
星に取り憑かれたようにぼーっとしていた。
部屋に戻り寝るまでの時間には恒例の枕投げが行われており、日々の鬱憤を晴らすが如く誰もが手元にある枕を
投げ込んでいた。
そんな中僕は1人まだ宇宙の中に取り残されぼーっとしていた。
「あ痛!」
顔面に枕が直撃した。
しかし、僕は仏のような顔をして枕渡す。
少しキモがられたような気もするが、今の僕には関係ない。
正気に戻ったのは就寝の時間だった。
寝静まる部屋。渡辺のいびきが響いている。
そんなことよりも…
眠れない。
正気に戻って急に心臓の鼓動が帰ったきたみたいだ。
体は疲れているのに、頭だけが元気な状態。
月明かりで青白くなっている天井をただ眺めるくらいしかできなかった。
さっきのツンツンはなんだったんだろう?
この言葉が僕の頭の中で無限に再生される。
今頃、女子は恋バナで盛り上がっているのかな?
姫川さんて好きな人とかいるのかな?
彼氏いるのかな?
僕は寝返りをうった。
壁。
ジャンボこと吉田の背中。
正直いてもたってもいられず、共用のトイレへ向かった。
目が明るさに慣れていなかったからか、トイレが異常に眩しくて薄目のような感じで用を足した。
共用のトイレの近くには共用の休憩スペースというか間があった。
明かりは非常灯の緑のランプだけで真っ暗だし、1人だし怖かった。
しかし、誰かが話しているっぽく気になった。
先生かな。この時間だとそうじゃないと怒られるはず。
僕はこっそりと覗いた。
「でももうそれなら別に良くない?」
そんな感じのことだけ聞こえた。多分生徒だった。それも男女。
暗かったから誰かまではわからなかった。けどこの時間に男女で話しているところを見つかったらやばくないか?
話が終わったのか2人は立ち上がり解散をした。
やばい、男の方がこちらに来る。
そう思った僕は足音が鳴らない最高速度の忍足で自室に戻り、布団に滑り込んだ。
布団の生温かさのせいか今日の疲労か、急に眠気がきてその後すぐに寝てしまった。
翌朝
館内放送がなった。
「おはようございます。朝食の準備ができました。まだ部屋にいる生徒は食堂に集合してください。繰り返します…。」
放送か。まだ部屋に?
やべ、寝過ぎた。
僕は2回目の放送があるまで寝ていたらしい。
部屋にはもう渡辺と数人しか残っていなく他の人は食堂に行ったらしい。
「渡辺起こしくれよ!」
「ふえ?」
ダメだ。こいつもいまさっき起きたんだ。
僕は寝癖も直さず、食堂に向かった。
大体、昨日と同じような配置で座っている。
ってことは僕またあそこの席⁈
あそこ女子ばっかで嫌なんだけど…。
「おはよ!」
バイキング形式なので御盆を持って並んでいると後ろから挨拶された。
振り返りながら、ふみゃふみゃした気の抜けたような声で挨拶を返した。
「おはようございま…す?!?!?!?!?!?!?」
寝起き感溢れるのパジャマ姿の姫川さんだった。
「ひ、姫川さん?!」
目が回った。
なぜか笑いを堪えるような顔で僕をみていた。直視はできていないが…そんな気がした。
「なんか変んですか?」
「ごめんごめん、なんでもない、それより姫川じゃないよ?さきちゃだよ」
「あ、そうでした」
「はい、言ってみて」
「さきちゃ…さん」
「さんはいらない」
「さきちゃ」
「はい、よくできました。」
「ありがとうございます。」
「昨日は色々大変だったね」
「……。」
僕はその色々が本当に色々あったから思い返すだけで心臓がおかしくなりそうだった。
「んじゃまたあとでね〜」
行ってしまった。
なんかいい匂いした気がする。
パジャマ姿、寝起き、なんか夫婦みたい。
いやいやいや、それは行き過ぎか。
「あの、進んでくれる?」
「あ、すみません」
気付いたら僕は渋滞を作ってしまっていた。
僕は朝から何をやっているんだ。
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願い致します。




