第四十三話 これをうまく言葉にできれば大人なのかな。
林業の業者に人が一通り森の説明やら挨拶を済ませ、実習に入る。
僕たちはもともと体操着で集合していたので体操着にヘルメットと軍手という装備。
森を歩きながら、いろいろな説明をしてくれていた。
こうやってみると森ってすごいな。森自体がまるで生きているような風で木や葉っぱが音を立てる度に僕は雄大な自然の畏敬を1人感じていた。
しばらく歩きてっぺんが見えないほど大きな木の伐採を見学するらしい。
チェーンソーで順序に則って木を切っていく。
ある程度切ったところで木が傾き始めた。
ズシーーーン!!
結構離れたところから見ていたがそれでもその地響きは、とてつもないものだった。
その後、少し開けたところにクラス毎に集合し木を切断?する作業行うことになった。
男女2人1組で行っていく。
割とその場にいる人でやる感じになり僕はたまたま近くにいたゆっちゃんと目があったのでペアを組むことにした。
作業を進めていくがさっきから必要最低限の会話しかしてない。もしかしてさっきのことまだ怒ってるのかな。
「怒ってる?」
僕はノコギリをギコギコしながら聞いてみた。
「何が?」
「いやバスの席」
「別に」
「そう」
しばらくギコギコタイムが続く。
「痛ッ」
次の瞬間、僕は慌てて手を引いた。
驚いたゆっちゃんが僕を心配して駆け寄った。。
「木の破片が軍手貫通して刺さった」
「なんだ、ノコギリで切ったかと思ったじゃん」
「なんだってひどいな、こういうのが一番痛いんだぞ」
「泣き虫」
「泣いてないだろ」
僕らはすっかりいつも通り?に戻った。と思いたい。
結果的に良かったか。
「救急箱もらってくる」
「大丈夫だよ、こんくらい」
「こういうのが一番痛いんでしょ?」
そうなんだけど、なんか大袈裟なやつみたいで恥ずかしい。
「はい、手出して」
「自分でできるよ」
「いいから」
僕は手を出すと…
プシュッ!
消毒液を傷口にかけた。
「痛ッテェェェェェェェーーー!」
僕は叫んだ。
怪我した時より痛かった。
「言ってよ!」
「うるさいなー我慢してよ消毒なんだから」
「こっちの方が痛いわ」
「せっかくやってあげてんのに」
「でももうちょっと優しくやってよ」
「お子ちゃま」
僕たちは周りの目も気にせず口論したのち…結果僕が謝る形で終わった。
こういうのは昔からよくあった。
「はい。これで完成」
「ありがと」
処置が終わり僕はボソッと少し拗ねたような感じでお礼を言った。
別に気まずいとかではなく、なんか、なんだかんだ自分に優しくしてくれているのを後から認識して素直になれないだけだった。心の中で反省していても意味はないんだけど、これをうまく言葉にできれば大人なのかな。
思ったよりハードというか歩く距離が長かった林業体験は日が沈む前には終わり宿舎へと僕たちは向かった。
もう9月末で夏は過ぎていたし、山の中だったから少し涼しいくらいになってきた。
僕たちは宿舎に着くなり、すぐに部屋へ荷物を運んだ。
各クラス毎、男女別に部屋分けはされていた。
「俺ここで」
「じゃあ、俺はここ予約―!」
僕の部屋では寝床の予約合戦。
どこでもいい僕はお風呂の支度をして1人抜き足忍足で浴場へと向かった。
もちろん僕が一番のりだった。
大きな浴場施設のような作りで中は蒸気で視界がややわるい。
広々とした大浴場を独り占めできるのは王様になったみたいで気分がいい。
早くお風呂に入りたいので最速で体をあらい、湯船に浸かった。
生き返る。
林業体験は思ったよりハードワークだったな。
なんか全然他の人たちが来ないから僕は少しソワソワしてきた。
周りをキョロキョロと見渡すとドアの張り紙に目が止まった。
ドアの向こうには廊下が続いており、その先に露天風呂があってそっちはどうやら温泉らしい。
おいおい最高かよ。
僕はタオルを腰に巻き、いざ温泉に向かうことにした。
スタスタと長い廊下を下っていく。
現れたのは石で囲われ、湯気がもくもくとまるで秘湯のような温泉。
真ん中に大きな岩があってそれがパワースポット的な?やつらしい。そう書いてある。
また、白い湯で肌や健康にいいとか。
黄昏時って感じの赤みの強い紫の空が幻想的でより温泉を引き立たせていた。
足先から入水。かなり熱い、まだ誰も入っていないからかな。
「あ〜〜〜〜〜〜〜神ーーいい湯だーーー!」
誰もいないことをいいことに声に出してリラックスしていた。
リラックスも束の間、廊下から誰か来たみたいだ。
もう楽園の時間は終わりか。
と僕は額にタオルを置いて空を向くような体勢で目を閉じた。
パチャッ!
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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