第三十九話 彼女はどちらかというと災害に近いタイプの竜巻だ。
放たれたシュートはゆっちゃんの決死のブロック。
弾かれたボールはラインを割り、攻守が変わる。
なんかバスケ面白いかもと思えるくらい僕も熱狂していた。
ゆっちゃんチームの攻撃はパス中心の攻撃で相手を翻弄しシュートチャンスを作る。
しかし、タイミングを読んでいたきららさんが現れパスカットを狙う!
がそれすらも読んでいたゆっちゃんが味方のパスをカットする動きでそのままレイアップで得点し、試合終了。
オオオオオオオオオオオ!
ゆっちゃんの最高のフィニッシュで終わった。
僕も大きな拍手を送っていた。
「ゆかちが勝ったね!」
ハッと僕は勝負のことを思い出した。
「あ、そうだった。あだ名か」
「うんうん」
「姫川さきだからー……」
僕が悩んでいると
「負けちゃったーー」
きららさんが僕のところへ来た。。
「はよ行こ。疲れた」
「えーーちょっと待ってー、きららさん?」
僕の服を掴んで力づく引っ張った。
「ごめんなさい、後でラインします!」
と僕は姫川さんへ言葉を残し、強引に連れて行かれてしまった。
冷水機の水をきららさんはがぶ飲みした。
「うめー水が一番うめー」
「そうですねー」
僕は不機嫌気味に答えた。
せっかくの姫川さんとの時間を妨害されたからだ。
「なんか不満げ」
「別になんでもないです。」
「へー。バスケ楽しいね、入ろっかなー」
「やってたの?」
「アメリカいるときね」
「アメリカ?」
「うん、小3からこの前までアメリカの学校行ってた。」
「何それだって鹿児島って言ってたじゃん」
「まあ出身は鹿児島だからさ」
「なるほど」
「まあ今日はありがと、大体わかった!」
「それはよかったです」
「んじゃまた明日からよろしく頼むぜ梵パイセン」
そう言うと瞬く間に帰っていった。
彼女はどちらかというと災害に近いタイプの竜巻だ。
まだバスケ部の練習は続くだろうし、帰るか。
僕は荷物を背負い別館の出口で靴を履こうとしてた。
「あっちょうどよかった」
「あれ?ゆっちゃん?練習は?」
「ちょっと足痛くて早退することにした。」
「この前のまだ治ってなかったんだ。」
「んまあちょっと頑張りすぎたかも」
「確かに。でもさっきのすごかったわ」
「まあーギリギリだったけどね」
このまま僕たちは一緒に帰ることになった。
歩けないほどではないと思うけど痛いのだと思う。
捻挫が長引くのは僕も知っている。小学生の時、捻挫した時は足首が取れたかと思ったのを思い出した。
いつもの帰り道を歩いていた。
「さっきの味方のパスカットしたのすごかったわ」
「あーきららちゃんって相手の動きを読んで一歩早く動いてたから、逆手にとってみた的な?」
「おいおい、天才なのか?」
「えーえー天才少女です」
2人はふざけながら帰り道を歩く。
「ところで足、大丈夫?」
「平気平気」
と言いつつも歩くの遅いし、額に結構汗をかいていたからきついんだと思う。
「嫌じゃなかったらおんぶしようか?」
「え?それは無理。重いよ?」
「力持ちだぞ?」
力こぶを見せつけた。
「はい」
渋々了承してくれた。というかやらないと気が済まないのを見透かされていた。
僕はしゃがんでおんぶの体勢になった。
ゆっくりとゆっちゃんが僕に体重を預ける。
僕は妹の冬をおんぶするのと対して変わらないと思っていたから余裕だと思っていたが、
体重が僕に乗り切った時、予想のはるか上をいく重さで立つだけで足が震えた。
それはそうだ。身長も数センチしか変わらないから自分を持ち上げているもんだ。
「大丈夫?」
「全然大丈夫!!」
僕は強がって余裕がったが、全く進まないためすぐにバレた。
「やっぱ自分で歩く。」
「え?大丈夫だよ僕なら」
「うるさい、歩く」
結局ゆっちゃんを降ろした。
怒らせただけになってしまった。
ゆっちゃんの遅いペースに合わせて僕は少し後ろを歩いた。
沈黙が少し続いた。
「ごめん」
ボソッと僕はつぶやいた。
「デジャブ?前にもあったよね」
「確かに」
「てかなんで体育館いたの?」
「え、あそれは部活案内的な?」
「あきが?」
「あ、はい」
「へーー仲がいいこと」
「いや、たまたま朝頼まれただけだけだよ」
「でも楽しそうだったじゃん」
「うん…」
「ニヤつくな!」
とゆっちゃんが僕の頭をチョップした。
怪我していたから弱かったけど。
ニヤついていたのは姫川さんと2人でお話しできたからなんだけど、これはまあ置いておこう。
この日はゆっちゃんの家まで行ってから帰ったので結局いつもの部活の帰りとそんなに変わらなかった。
こうして貴重なオフは終わることはなく、姫川さんのあだ名を考えると言ったのを思い出した。
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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