第三十七話 僕の妄想甲子園
僕たちはお礼を言って和室を後にした。
「おいしかったねー!次何いく?」
「おいおい、文化祭じゃないんだぞ?」
「文化祭?」
「文化祭」
「何それ?」
「うーん、学校でやるお祭りみたいな?」
「そんなのあるの?楽しそー!」
「11月だからまだ少し先かな」
「そうなんだ、楽しみ!」
喋りながら、たどり着いた先は音楽室。
ここでは吹奏楽部が練習をしている。
「はい、次はここ、吹奏楽部」
音楽室はドアの窓から覗けたのでドア越しに見ていた。
みんな真剣な表情で演奏していた。
多種多様な楽器で一つ曲を作り上げる合奏はいつみても感心してしまう。
「わーすごいね!みんな」
「うん、すごい」
いつも部活の練習の最中に音は聞こえていたけれど、近くで聞くと迫力が違う。
目を閉じれば、そこは甲子園。バッターボックスには僕がいて一打逆転。
会場の盛り上がりは最高潮。僕の名前が響き渡る。
かっとばせー!そ・よ・ぎ!
カッキーン!
おおっとこれは右中間!いい当たりだ!
会場は歓声と相手チームの悲鳴に包まれる。
「アウト!素晴らしいダイビングキャッチでチームを救いました!」
「おい、勝手にアウトにすんなよ」
「ウーーーーーーー(サイレンの音)」
「試合終わってんじゃんか」
きららさんはクルリと反転した。
「よし、次行こう!」
「あ、はい」
「砂持った?」
「おい、だから敗退させんなって」
僕の妄想甲子園はあっけなく敗退するわけだけど…
きららさんの観察力というか、なんていうかもう、すごいわ…。
それから、書道部、美術部、漫画部、パソコン部と回っていった。
正直結構疲れてきた。きららさんは全然その様子はないけど。
僕たちは体育館とプールがある別館に行くことにした。
別館を周ったらそのまま帰るつもりだったので荷物と靴を回収してから向かった。
まずは一番下の階にあるプールからだ。水泳部が練習しているはずだったけど今日はオフみたいでいなかった。
別館はジメジメしているというか湿気で独特な匂いがする。
続いては体育館、バレー部とバスケ部が今日はコートを半分に分けて練習していた。
多分、他の日だとバドミント部とか卓球部とかがいるのかな。
さすがに歩き周って疲れたので体育館の観戦席的なところで部活を眺めながら休憩することにした。
「ちょっと冷水機行ってくるけどいく?」
「んーん大丈夫、ここで見てる」
「オッケー、すぐ戻ってくるから」
「へーい」
僕は冷水機のある体育館横にある広間へ行った。
ここで水を飲んでいると初めて姫川さんにあっと時のことを思い出すなー。
というか体育館に今いるんじゃね?
っと僕は思い立ち水を飲んでいた体勢から、フットペダルから足を離し勢いよく反転した。
「あ痛」
「痛った」
僕は誰かの頭と正面衝突した。
急に動き出した自分が悪いのですぐに謝ろうとしたが、
「すみませっ」
「ごめんさっ」
ほぼ同時だった。
「あれ姫川さん?」
「梵くん?」
ぶつかったのは姫川さんだった。
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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