第三十六話 この子といるとツッコミキャラになってしまう。
テスト用紙にカリカリと擦る鉛筆の音だけが教室に鳴り響く。
その音が余計に僕を焦らせる。
漢字の部首だけわかるのに片側がわからずに何度も雰囲気で書いては消していた。
ころん。
僕は慌てていたからか消しゴムを落としてしまった。
あんまり厳密なテストではないので自分で拾おうと右手を伸ばす。
大体の落ちている場所はわかっていたのでノールックで取ろうとしたら、
感触的に消しゴムよりも柔らかいものを掴んだ。
「あ」
僕を視線を向けると…
それはきららさんの指だった。
すぐさま手離し、きららさんを見るとにっこりと笑い、テスト用紙が机からはみ出すように僕に見せてきた?と思う。
僕は空白ばっかりなのでもしかしてそれを察してのことかと思い、先生にバレないように気をつけながら、きららさんの回答を盗み見た。
空白。
僕のテスト用紙よりも空白だ。
結局、漢字の小テストはそのまま終わり、僕は酷い点数を叩き出した。
おそらく隣のきららさんもそうに違いない。
一体何を考えているのか、全くわからない。
なんか距離感も変だし。
この後は特に何事もなく放課後まで時間が進んだ。
今日はオフになったので放課後になった途端ウキウキが止まらなかった。
「あれーあきオフだよね?帰んないの?」
「うん、ちょっと用事があって」
「そうなんだ、じゃまた明日〜」
ゆっちゃんは部活のため体育館へ向かった。
はてどこから案内するかねー。
僕は手を頭の後ろで組み、背もたれを使って椅子を揺らしていた。
「お待たせだぜ」
「あ、おかえり」
先生に事務的なことで呼ばれていた、きららさんが戻ってきた。
語尾とか単語がなんか変なんだよな。
「どこ行きたいとかある?」
「んーーアメフトとか?」
「いや、ないわ。てかプレーしないでしょ」
「そうなの?じゃあチアリーダー」
「それもない」
「全然ないじゃん」
「普通はないよー公立の中学なんだし。」
「そうなんだ。うちのいたところにはあったけどなー」
きららさんは一体どんな生活をしてたんだ。
アメリカ人なのか?
「とりあえず、全部見てみる?」
「うん、みるみる!」
僕たちは本校舎の文化系の部活から周ることにした。
まず着いたのは茶道部。
校内唯一の和室で落ち着いた空間だ。
サッサッサッサッサッサッサッ。
ドアを開けると何かを混ぜるような音が聞こえた。
お抹茶かな?
ものすごい集中力だ。邪魔しちゃ悪いのでちょっと覗いてすぐ出ようと思ったら、
「失礼しまーす。ここでお抹茶飲めますか?」
きららさんが話しかけてしまった。
文化祭じゃないんだし普通にダメだろ。
「ごめんさない、転校してきたばっかりで」
僕はすぐフォローを入れた。が
「あ、はい」
茶道部の生徒たちはポカーンとしながらきららさんの質問に答えた。
「じゃあ飲んでみたいです!」
「別にいいですけど、ちょっと待ってください。今用意するので」
いいんかーい!
この子といるとツッコミキャラになってしまう。
素敵な器にお抹茶を注いでくれた。
「はい、どうぞ」
作法というか所作一つ一つが美しく、少し恥ずかしくなった。
僕の分も入れていただいた。
僕ときららさんは雰囲気に合わせて軽く会釈をして飲んでみた。
思ったよりも美味しい!苦いのを想像していたから驚いた。
「結構なお手前で」
ときららさんが渋い顔をしながら言った。
一体どこで覚えてきたのか不思議に思い、吹きそうになった。
「ありがとうございます。」
と茶道部の生徒が一礼をした。
普段は部員同士で飲むとかで、他の生徒に入れる機会もあまりないのだろう。
嬉しさがこちらにも伝わるような顔をしていた。
僕たちはお礼を言って和室を後にした。
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。




