第三十五話 いや全然ウケないだろ
笑って誤魔化したけど、予想外な距離感に僕は困惑した。
「あ、今度部活案内してよ?」
「え、全然いいですけど、オフの日なら」
「やったーあと、自己紹介の日に言ったけどきららって呼んでね。黒須って名前なんかかあんま好きくない。」
「そうなんですね、じゃあきららさんで」
「うん!完璧!」
そんな会話をしていると他の生徒が徐々に登校してきた。
みんな、きららさんのことが気になり、囲われて質問攻め状態だ。
おかげで僕の席の周りはとても騒がしい。
その日のお昼休み。
僕は自席でご飯食べている。
もちろん1人だ。友達は増えたけど、毎日囲まれるような人気者ってわけではない。
きららさんもクラスの女子から大人気で呼ばれて行ってしまった。
僕は別に1人でお弁当を食べることは全然大丈夫だ。
ただ、1人で食べているやつって周りから思われるのは非常に困る。
「僕は別に1人でお弁当を食べることは全然大丈夫だけど、1人で食べている可哀想なやつって周りから思われるのは非常に困る。それって平気なの?」
「えっな、なに?黒須きらら!声に出てた?」
僕は謎の思考をはりめぐませている時に深く集中することがある。
だから無意識にボソボソ言ってしまったのかと思った。
後ろから囁いてきたのはきららさんだ。
「ええ⁈本当に思ってたの?ウケる!」
いや全然ウケないだろ。ぼっちの戯言だぞ?
僕は自ら自分の恥ずかしい思考を露呈してしまった。
というかきららさんと話すと妙に調子が狂う。
リズムがかき乱されみたいな。
ピーンポーンーパーンーポーン!…
学内放送が鳴った。
「本日は緊急で校庭のスプリンクラーの工事が放課後行われることになりました。よって校庭で部活動を行うことができません。その後の対応は各顧問に指示を仰いでください。繰り返します…。」
僕はいや僕たちは野球部員に緊張が走る。伝令の2年生が今日の部活の有無を伝えにくるからだ。
絶対に内トレ(筋トレ中心の校内トレーニング)は嫌だ。
程なくして、サッカー部はオフと決まり喜んでいる。僕は不当な怒りをサッカー部に向けながら続報を待つ。
廊下を走ってくる音が聞こえた。
キタッ!!
「野球部2年の古木です。野球部の人に連絡します。」
教室は他学年が来たからか静まり返えった。
余計に緊張した。
「今日は…オフです!」
「はい!」
僕と渡辺を含む野球部が返事をした。
オフ連絡の時ほど、のぶとく渋い返事をするときはない。
渡辺たちは先輩が去った後はガッツポーズを掲げ抱き合っていた。
まるで海外映画のラストシーンみたく。
僕は恥ずかしいので心の中でガッツポーズをした。
「ガッツポーズ終わった?」
「え?あ、はい」
「してたんだ」
また一本取られた。僕はちょろいのだろうか。
「じゃあ部活案内行けるね!」
「あ、確かに、行きますか」
「やったー!」
僕のオフは部活案内に変更した。
そうこうしているうちに午後の授業開始のチャイムが鳴った。
「起立、気をつけ、礼」
昼休みに何かしようとしてたはずなんだけど、思い出せない。
モヤモヤする。
「はーい後ろに回してー」
ザワザワする中、小さな紙が回ってきた。
手に受け取った瞬間分かった。
うん、全て思い出した。
漢字の小テストだ。
直前で叩き込めば意外といける戦法で昼休みにやろうと思ってたんだ。
やらかした。
「じゃあ表にしてー、よーいはじめ!」
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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