第三十四話 席替えが人生の楽しさの全てを決めている
教卓の前に来ると自己紹介を始めた。
「はじめまして、黒須きららです。鹿児島県から来ました。よろしくお願い致します。きららって呼んでください!」
パチパチパチ。
気のせいだと思うけど僕の方を見て言った気がした。
圧倒的だった。これが女神なのか。クラスの男子は確実に配下になっただろう。
憧れのような視線から女子も彼女に心を奪われたに違いない。
この日はこれで帰るらしく、彼女はすぐに教室を去った。
これはまた違った嵐の予感だ。
ホームルームが始まるとゆっちゃんが後ろからヒソヒソと声をかけてきた。
「さっきの誰?友達?」
「さっきの?いや知らない人」
「そうなの?あきのこと知ってそうな顔をしていたから」
「何それ?、僕も今日初めて会ったし」
女の勘?かわからないけど、もしかして本当に僕のこと見ていたのかな?
少し僕は浮かれた。
そして勝負ここからだった。
新しい学期が始まったということはそう、席替えだ。
すでに教卓には数字が書いてある紙が四つ折りでたくさん並べられている。
先生が黒板に席と番号を書き始めた。
みんなソワソワし出す。
なぜだろう、この時だけは席替えが人生の楽しさの全てを決めているようなそんな気がしてならない。
教卓に座席番号の書いた紙を一斉に取りに行く。
渡辺が誰よりも早く紙を取った。
選ぶ順番は関係ないのにな。
全員取った。一斉に開けるのだが、一つだけ紙が余る。
そうそれは転校生の黒須きららの席番号。
番号を確認次第黒板に書いてある座席表に自分の名前を書きに行くことになっている。
空白の席がが黒須きらら、そういうことだ。
「はーい、じゃあ開けてくださーい」
先生の合図とともに一斉に紙を開く。
ザワザワザワ
結果は変わらないのに黒板に名前を書きに行くことを躊躇っている。
「ほら、前来て名前かけー」
先生が促したため、徐々に生徒が名前を黒板に書きに行った。
黒板の前が人でごった返していた。
次々と名前が埋まっていく。
悲鳴と歓喜が教室に鳴り響く。
僕の席はというと一番後ろの窓際。多分一番あたりだと思い、高みの見物の如く席で様子見をしていた。というか隣が誰か気になっていた。
なかなか埋まらないし、もうほぼほぼ埋まってきたので僕も書きに行った。
さっと書いて席についた。
最後の1人が書き終え、これで全員の席が確定した。
僕は黒板の一点に視点を集中していた…
僕の隣が空白。圧倒的空白。
そして、先生が黒須と名前を書き足した。
僕は真顔で表情に一切の揺らぎもなく心の中でガッツポーズをした。
勝利!
「また、近いね」
「え?あほんとだ!」
隣の席に注目しすぎて気づかなかったがゆっちゃんが斜め前だった。
それに僕の前は日下部。
仲良い人が近くに多くて嬉しい。これでぼっちじゃないはず!
席を実際に移動させ、この日は終わった。
次の日。
僕は部活の朝練が始まったため、みんなより早くきていた。
少しソワソワしながら、席で待っていると黒須さんが初日だからか、かなり早い時間に来た。
ガラガラガラ。
教室に入るとキョロキョロと辺りを見渡して僕を見つけるとまっすぐ僕の所へ来た。
「あのー」
「あっ黒須さんおはようございます。」
僕はあたかも黒須さんに今気づいたみたいな反応で慌て気味に答えた。
緊張していたからである。
「私の席って?」
「あ、そうですよね。一応、ここらしいです。」
僕は先生がここに配置したような口調で隣の席を指差した。
まあ実際くじ引きだし。
「ありがとう」
「いえ、何かわからないことがあったら聞いてくだい」
「はい」
会話が途切れた。
扇風機の音だけが教室に鳴り響き気まずい。
「あ」
「あ」
同時に喋ってしまった。
「すみません、先にどうぞ」
「名前聞いてもいい?」
「あ、失礼しました。梵あきです。野球部です。」
「初めまして、あきくん。黒須きららです。帰宅部です。」
「初めまして、ははは。部活はまだですもんね。」
んんんんんん??????
あきくん?誰のこと?名前呼び?
笑って誤魔化したけど、予想外な距離感に僕は困惑した。
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。




